1. はじめに:羽曳野市で始まる新しい「スクラップヤード」規制
近年金属スクラップヤードの規制が各都道府県で始まっておりますが、大阪府で初となる羽曳野市において、再生資源物の適正な保管を目的とした**「羽曳野市再生資源物の屋外保管に関する条例」**が施行されます 。
この条例は、近年社会問題となっているスクラップヤードでの火災、延焼、資源の崩落、さらには騒音や振動といった近隣トラブルを未然に防ぐために制定されました 。令和7年(2025年)12月26日に公布され、令和8年(2026年)4月1日から本格的な運用が始まります 。
特筆すべきは、「現在すでに営業している事業者」にも届出義務があるという点です 。本記事では、羽曳野市内で再生資源物を扱うすべての事業者が知っておくべき、新ルールの全貌を徹底解説します。
2. あなたの事業は対象?「再生資源物」と「屋外保管」の定義
2-1. 対象となる「再生資源物」とは
本来の用途以外の用途に供するための、以下の原材料、またはそれらの混合物を指します(分解、破砕、圧縮等の処理がされたものを含みます) 。
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金属(鉄くず、アルミ、銅など)
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プラスチック
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木材、ゴム、ガラス、コンクリート、陶磁器
「廃棄物処理法」で定める廃棄物 * 「有害使用済機器」(家電など)に該当するもの これらは別の法律によって既に規制されているため、本条例の対象からは除外されます 。
2-2. 「屋外保管」の定義と対象設備
本条例が適用されるのは、以下の条件をすべて満たす場合です。
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屋外(屋根、柱、壁、床がある建物以外の場所)で行う保管 。
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特定の機械を使用して再生資源物を積み上げる行為 。
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それらを**「業として(ビジネスとして)」**行っていること 。
使用機械として具体的に定義されているのは以下の通りです。
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バックホウおよびこれに類する機械
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フォークリフトクレーンおよびこれに類する機械
これらの重機を使って資材を積み上げている場合、小規模な集積場であっても届出が必要になる可能性があります 。
3. 事業者が守るべき「4つの技術基準」
条例第6条に基づき、事業者は火災や事故を防ぐための厳格な「基準」を遵守しなければなりません 。
3-1. 火災・延焼防止措置(施行規則第6条)
火災の発生を防ぎ、万が一の際も被害を最小限に抑えるための措置です。
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油類・電池の分離: 揮発油、灯油、軽油、電池などが含まれる場合は、技術的・経済的に可能な限りこれらを分離し、適正に処分しなければなりません 。
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区画の制限: 保管面積が200平方メートルを超える場合は、1つの区画を200平方メートル以下に区切らなければなりません 。
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2メートル以上の通路: 区画と区画の間には、原則として2メートル以上の間隔が必要です 。
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仕切り板による緩和: 建築基準法で定める**「不燃材料」**(コンクリートや鉄鋼など)の仕切り板を設置した場合、この2メートルの間隔制限は適用されません
3-2. 再生資源物の「積み上げ高さ」制限(施行規則第8条)
資材の崩落を防ぐため、積み上げ可能な高さは厳密に計算されます。基本は**「勾配50パーセント(約26.5度)」**のルールです 。
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囲いに荷重がかからない場合: 囲いの下端から50パーセントの勾配の内側(三角形の斜面の内側)に収めなければなりません 。
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囲いに荷重がかかる場合: 囲いが資材の圧力に耐えられる「構造耐力上安全」なものであることが前提です 。
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囲いの内側2メートルまでは、囲いの高さマイナス50センチメートルの高さが上限となります 。
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さらにその内側は、2メートルの地点から50パーセントの勾配をつけた高さまでとなります 。
3-3. 騒音・振動の基準値(施行規則第7条)
事業場の敷地境界線上において、以下の数値を超えてはなりません。羽曳野市内の用途地域によって基準が異なります 。
騒音基準(上限デシベル)
| 区域区分 | 朝 (6-8時) | 昼間 (8-18時) | 夕方 (18-21時) | 夜間 (21-翌6時) |
|---|---|---|---|---|
| 第1種区域 (低層住居専用等) | 45 | 50 | 45 | 40 |
| 第2種区域 (住居、準住居等) | 50 | 55 | 50 | 45 |
| 第3種区域 (近隣商業、準工業等) | 60 | 65 | 60 | 55 |
振動基準(上限デシベル)
| 区域区分昼間 | 昼間 (6-21時) | 夜間 (21-翌6時) |
|---|---|---|
| 第1種区域 (住居系全般) | 60 | 55 |
| 第2種区域 (近隣商業、準工業) | 65 | 60 |
3-4. 標識の掲示と囲いの設置(条例第6条第2項)
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囲いの設置: 事業場の周囲には必ず「囲い」が必要です 。
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標識の掲示: 公衆の見やすい場所に、**「事業者の氏名/名称」「保管する物の種類」**を記載した看板を掲示しなければなりません 。記載内容に変更があった場合は、遅滞なく書き換える必要があります 。
4. 届出のタイミングと必要書類
届出は「出せば終わり」ではなく、事前の準備が重要です。
4-1. 届出の期限(要注意!)
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新規事業者: 事業を開始する**「あらかじめ」**届出が必要です 。
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既存事業者: 令和8年4月1日の時点で既に営業している場合、施行から6ヶ月以内、つまり令和8年(2026年)9月30日までに届出を完了させなければなりません 。
4-2. 主な提出書類(施行規則第3条)
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屋外保管届出書: 連絡先、責任者情報、機械の種類、配置図、囲いの詳細などを記載したもの 。
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本人確認書類: 住民票の写し(法人の場合は登記事項証明書、定款、役員の住民票) 。
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土地の権原を証する書類: 賃貸借契約書の写しや土地登記簿謄本など 。
5. 行政による監督と罰則
羽曳野市は、本条例の適正な運用を確保するため、強力な指導権限を持っています。
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立入検査・資料提出: 市長は必要に応じて、事業者に対して事務所への立入検査や資料の提出、説明を求めることができます 。
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指導及び助言: 安全確保のために必要な指導や助言が行われます 。
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事故時の報告義務: 火災や崩落などの事故が起きた場合、直ちに状況を市に報告し、必要な措置を講じなければなりません 。不十分な場合は市から改善を求められます 。
6. 行政書士がサポートする「安心の届出代行」
本条例への対応は、単なる書類作成にとどまりません。現場の状況を正確に把握し、技術基準をクリアしていることを証明する必要があります。
当事務所では、以下のトータルサポートを提供しています。
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現地実測と図面作成: 200平方メートル区画の割り振りや、50パーセント勾配に基づいた高さ制限の計算を行い、正確な配置図を作成します。
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用途地域の調査: 騒音・振動基準が適用される「区域区分」を正確に特定します。
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土地権原の確認: 賃貸借契約の内容が条例の届出に適合しているか確認し、不足があれば地主様との調整をアドバイスします。
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標識の作成アドバイス: 条例で定められた記載事項を網羅した看板の仕様を提案します。
7. まとめ:既存事業者の皆様、時間は限られています
羽曳野市の新条例施行まで、あとわずかです。特に**令和8年9月末までの「既存業者向け猶予期間」**を過ぎてしまうと、無届での営業となり、行政指導の対象となるリスクがあります。
資材の積み上げ方法を見直したり、不燃材料の仕切り板を導入したりといった「現場の改善」が必要になるケースも多々あります。直前になって慌てないよう、今すぐ準備を始めましょう。
次のステップとして
まずは貴社の現場が「現在の基準で届出可能か」を判定する「現地事前診断」を承っております。 配置図の作成や、複雑な高さ制限の計算だけでも大変な作業、弊所が代行いたしますので、ご相談ください。
