ガラス工事業で建設業許可を取得するメリットと導入

この記事は、税込500万円以上のガラス取付け工事を受注したい中小零細のガラス店・サッシ店の経営者や個人事業主に向けて、建設業許可(ガラス工事業)を取得するメリットと具体的な手続き方法を徹底的に解説するものです。
許可取得の要件・必要書類・スケジュール感だけでなく、行政書士への無料相談を賢く活用するテクニックまで網羅しているため、初めての申請でも安心して読み進められます。
ガラス工事業で建設業許可を取得すると、
①税込500万円以上の工事を元請けとして直接請け負える
②公共工事や大手ゼネコンの下請枠に応募できる
③顧客・金融機関からの信用力が向上し資金調達や補助金申請が有利になる
といった多層的なメリットがあります。
一方、許可取得には役員経験・技術者資格・財産基盤など5大要件を満たす必要があり、書類不備や工事区分の誤認で不許可となるリスクもあります。
そこで本章では、導入部分として許可取得が経営戦略に与えるポジティブな影響を解説し、記事全体のロードマップを提示します。
目次
- ガラス工事業で建設業許可を取得するメリットと導入
- ガラス工事とサッシ工事の違いを初心者向けに解説
- ガラス工事業者が許可を取得する3つのメリット
- 建設業許可『ガラス工事業』の種類と該当範囲を把握しよう
- ガラス工事業は何業種に該当?建設業許可の種類を整理
- 一般建設業と特定建設業の違い-元請への影響とメリット
- サッシ取付・ガラスフィルム加工など建設工事区分の判断基準
- 許可取得の6大要件
- 許可申請の流れと必要書類-専門家が徹底解説
- 行政書士への無料相談の活用術(電話・メール・フォーム)
- よくある問合せとトラブル回避策Q&A
- さいごに
ガラス工事とサッシ工事の違いを初心者向けに解説
建設業許可の区分上、ガラス工事(業種コード160)は「工作物にガラスを加工して取付ける工事」を指し、サッシ工事は建具工事(業種コード101)に含まれます。 枠アルミサッシを取り付ける作業は建具工事、窓枠に収めるガラス板の切断・研磨・シーリング・フィルム貼付はガラス工事という整理です。 許可を誤って取得すると無許可営業の扱いになり、指示処分や罰則の対象になるため、工事内容の線引
比較項目 | ガラス工事 | サッシ工事 |
---|---|---|
建設業許可業種 | ガラス工事業(160) | 建具工事業(101) |
主な作業 | ガラス切断・研磨・施工・フィルム貼 | アルミ・樹脂サッシ取付 |
資格例 | ガラス施工技能士 | 建具製作技能士 |
ガラス工事業者が許可を取得する3つのメリット
ガラス工事業者が建設業許可を取得する主なメリットは次の3点です。
-
大型商業施設や公共工事の入札に参加でき、売上規模を一気に拡大できる。
-
元請けゼネコンからの一次下請け指名が増え、単価アップと支払サイト短縮が期待できる。
-
銀行融資やリース契約時の審査がスムーズになり、最新機材導入や人材採用投資を加速できる。
建設業許可『ガラス工事業』の種類と該当範囲を把握しよう
建設業許可には29業種が存在し、ガラス工事業は仕上げ工事に分類されます。
しかし実務の現場では、ガラスフィルム貼りや鏡取付など一見ガラス以外にも見える作業が多数含まれており、工事区分の誤認が頻発します。
本章ではガラス工事業に該当する工事範囲を明確にし、他業種とのグレーゾーンを回避するためのチェックリストを提示します。
ガラス工事業は何業種に該当?建設業許可の種類を整理
ガラス工事業に該当する主な工事は、店舗フロントガラス取付、網入り防火ガラス取替、断熱Low-Eガラス施工、ガラスフィルム貼付、鏡貼付工事などです。
一方、スチールドアにガラスを組み込む場合や自動ドアユニットを含む工事は、ドア本体の製作工程が多ければ建具工事の可能性もあるため注意が必要です。
『ガイドライン別紙』を参照しながら、見積書・発注書に記載する工事名を統一することで、後々の更新申請や経審の際の指摘リスクを軽減できます。
一般建設業と特定建設業の違い-元請への影響とメリット
一般建設業は下請代金総額が4,500万円(建築一式6,000万円)未満の元請工事を対象とし、資本金500万円以上+自己資本要件のハードルが低めです。
対して特定建設業は4,500万円以上の下請契約を締結する場合に必須で、資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上など財務基盤が厳格に求められます。
ガラス工事業者がゼネコンの二次下請であれば一般許可で十分ですが、自社が元請として大型商業施設の全面ガラスファサードを受注する予定がある場合は、特定許可取得を中長期計画に組み込むべきです。
比較項目 | 一般建設業 | 特定建設業 | 3 |
---|---|---|---|
下請金額上限 | 4500万円以上 | 4000万円以上 | |
自己資本要件 | 500万円以上 | 2000万円以上 |
サッシ取付・ガラスフィルム加工など建設工事区分の判断基準
サッシ取付は建具工事、網戸張替は内装仕上工事、ガラスフィルムだけを貼る場合はガラス工事、ガラスフィルムとサッシ交換を一括で請け負うなら建具+ガラスの2業種になるなど、複数業種が交錯するケースが増えています。
国交省の『建設業許可事務ガイドライン別表二』では、主要材料・施工量・工事金額など総合的に判断するよう示されているため、見積書の内訳と出来形写真を整理し、証拠資料として残しておくことが重要です。
行政書士に相談する際には、過去の請求書と工事写真を持参すると正確な業種判定が受けられます。
許可取得の6大要件
建設業許可の審査は『経営業務の管理責任者』『専任技術者』『財産的基礎』『欠格要件に該当しないこと』『社会保険加入』『誠実性の確保』という6大要件で構成されています。
どれか一つでも欠けると不許可となり、再申請には3~6か月かかるケースもあるため、事前に要件適合性をチェックし、不足部分は早期に補完しておきましょう。
常勤役員等要件-役員の経営経験を証明する方法
経営業務の管理責任者(略称『経管』)は、ガラス工事業または他業種で5年以上の経営経験を持つ常勤取締役等が必要です。
個人事業主であれば確定申告書Bや工事請負契約書、法人であれば取締役在籍期間を示す履歴事項全部証明書などを提出して経験を証明します。
万が一役員に該当者がいない場合は、外部から経験者を役員登用するか、経営経験が3年以上ある場合は『経管補佐要件+管理補佐者』の特例を活用する手段も検討しましょう。
詳しく知りたい方は、建設業許可を得意とする行政書士に相談をしましょう。
営業所技術者要件-ガラス施工技能士・ガラス工の資格または実務経験
専任技術者には『1級・2級ガラス施工技能士』『1級建築施工管理技士』『2級建築施工管理技士(仕上げ)』など国家資格保持者、もしくは10年以上のガラス工事実務経験者が該当します。
2級技能士の場合は合格後3年以上の実務経験が追加で必要など細かな要件があります。
申請時には、合格証書の写しや実務経験証明書(工事経歴書+注文書・請書)を用意し、工事写真・材料発注書を添付すると審査がスムーズです。
ガラス施工技能士1級・2級と10年実務経験の比較
資格取得と実務経験どちらを選ぶべきか悩む事業者は多いですが、確実性では資格取得が優位です。
一方、10年実務経験で申請する場合、全工事の契約書や帳簿を揃える手間がかかりますが、学歴不問で費用を抑えられるメリットがあります。
項目 | 1級技能士 | 2級技能士 | 実務経験 |
---|---|---|---|
試験費用 | 約18万円 | 約15万円 | 不要 |
受験期間 | 最短1年 | 最短1年 | ― |
書類作成難易度 | 低 | 低 | 高 |
財産的基礎要件・欠格事由・誠実性をトリプルチェック
一般建設業では自己資本500万円以上の利益が求められます。決算書の純資産の部で示すか、500万円以上の残高証明書を提出するケースが多いです。
欠格事由は過去5年以内の建設業法違反、暴力団関係者、破産手続開始決定などが対象となり、役員・主要株主・支配人まで含めて調査されます。
申請前に反社チェックリストと税・社会保険滞納状況を確認し、問題があれば専門家に早期相談しましょう。
誠実性とは、請負契約や履行に際し、不誠実な行為はあってはなりません。その恐れがある場合は建設業を営むことが出来ないのでご注意ください。
社会保険加入や建設業法遵守などその他の一定要件
2020年10月以降、健康保険・厚生年金・雇用保険未加入事業者は原則許可が下りません。
労働保険年度更新や社会保険料納付が遅延していると納税証明で判明し、不許可の原因となります。
元請からの指示で一時的に加入した『雇われ技術者』の場合、申請時点で別企業に在籍していないか厳格に確認されるため注意しましょう。
許可申請の流れと必要書類-専門家が徹底解説
許可申請の基本フローは『要件確認→証拠資料収集→申請書作成→都道府県窓口提出→補正対応→許可証交付』の6ステップで、平均審査期間は45日程度です。
許可申請に必要な書類一覧と取得方法
主な書類は『建設業許可申請書』『工事経歴書』『直前3年の営業報告書』『役員等の一覧表』『登記事項証明書』『身分証明書』『納税証明書』など計30点前後に及びます。
身分証明書は本籍地市区町村役場、納税証明書は都道府県税務署、などで取得出来ます。
受付時間・手数料・審査期間の目安
都道府県窓口の受付時間は平日9時~12時、13時~16時が一般的で、事前予約制を採用する自治体も増えています。
許可手数料は知事許可90,000円、大臣許可150,000円で、岡山県など一部自治体では県証紙を購入する方式です。
審査期間はおおむね45日ですが、繁忙期の3~4月や9~10月は申請件数が増加し、45日以上かかる場合があるため計画的に申請しましょう。
行政書士への無料相談の活用術(電話・メール・フォーム)
行政書士事務所の無料相談を活用する際は、①現在の事業規模と従業員数、②過去3年分の工事実績、③不足している要件の自覚ポイントを事前に整理して伝えると、面談時間を最大限に活かせます。
電話相談は即時性が高い反面、要件の細部までは伝わりにくいので、相談後にメールやフォームで図面・写真・契約書を共有し補足説明を受けると情報の齟齬がなくなります。
複数の事務所を比較する際は、報酬体系(定額or歩合)、着手金の有無、補正対応回数まで必ずチェックし、自社に合ったパートナーを選定しましょう。
よくある問合せとトラブル回避策Q&A
Q1:技能士試験の合格証を紛失した場合はどうすれば?
A1:中央職業能力開発協会へ再交付申請(手数料1,500円)を行い、申請中は合格証取得見込証明書で代替可能です。
Q2:社会保険に加入したばかりで納付実績がない場合は?
A2:加入日が確認できる適用通知書と誓約書を提出し、納付書控えは次期更新時に補完提出すれば問題ありません。
Q3:許可取得後に業務停止処分を受ける主な原因は?
A3:名義貸しや一括下請禁止違反が多く、契約書テンプレートを改定し元請と協議のうえ発注形態を見直すことが最善策です。
さいごに
ガラス工事業で建設業許可を取得するには、要件や手続き、必要書類をしっかり理解し、計画的に準備することが大切です。
特に初めての方は、専門家のサポートを活用することで、ミスやトラブルを防ぎ、スムーズな許可取得が可能となります。
許可取得後も、定期的な届出や法令遵守を徹底し、事業の信頼性と成長を目指しましょう。
この記事を参考に、建設業許可取得の第一歩を踏み出してください。
記事を書いた行政書士

行政書士:岩田雅紀
『環境系専門の専門行政書士』行政書士岩田雅紀事務所代表
産廃業許可、建設業許可申請を主な業務として取り扱っている。
資格:行政書士 天井クレーン 車両系建設機械 etc