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なぜ今「積替え保管」が注目されているのか

近年、日本の産業廃棄物処理業界は大きな変革期を迎えています。建設業界の活況に伴い廃棄物排出量が増加する一方で、処理施設の立地制約や運搬コストの高騰が深刻な課題となっています。

特に2020年以降、新型コロナウイルスの影響により物流業界全体で人手不足が深刻化し、燃料費の高騰も相まって、従来の「排出場所から処分場まで直行」する運搬方法では採算が取れないケースが増加しています。

このような背景から、運搬効率の向上とコスト削減を実現する「積替え保管」への注目が高まっており、多くの産業廃棄物処理業者が積替え保管施設の設置を検討しています。しかし、積替え保管を行うためには厳格な許可要件を満たす必要があり、正しい知識と準備が不可欠です。

行政書士:岩田雅紀
『環境系専門の専門行政書士』行政書士岩田雅紀事務所代表

産廃業許可、建設業許可申請を主な業務として取り扱っている。

資格:行政書士 天井クレーン 車両系建設機械 etc

目次

 

  1. 積替え保管とは?基本的な仕組みを理解する
  2. 「積替え保管あり」と「なし」の根本的な違い
  3. 積替え保管のメリット・デメリット
  4. 積替え保管許可の取得要件
  5. 許可申請の流れと必要書類
  6. 施設設置基準と構造要件
  7. 運営時の注意点と法的義務
  8. よくある質問(Q&A)

積替え保管とは?基本的な仕組みを理解する

 

  1. 収集段階:排出事業者から産業廃棄物を収集
  2. 積替え段階:収集した廃棄物を積替え保管施設で一時保管
  3. 分別・選別段階:必要に応じて廃棄物の分別や有価物の選別を実施
  4. 再積込み段階:適切な処理施設に向けて再度積み込み
  5. 最終運搬段階:処理施設まで効率的に運搬

 

この一連のプロセスにより、運搬効率の向上とコスト削減を実現することができます。

「積替え保管あり」と「なし」の根本的な違い

産業廃棄物収集運搬業の許可は、「積替え保管あり」と「積替え保管なし」の2つに大別されます。それぞれの特徴と違いを詳しく見ていきましょう。

積替え保管なしの場合

替え保管なしの場合

 

特徴:

  • 排出場所から処分場まで直接運搬
  • 運搬途中での廃棄物の積み降ろしは原則禁止
  • 許可取得の要件が比較的シンプル
  • 施設設置の必要がない 

適用場面:

少量の廃棄物を定期的に運搬する場合

排出場所と処分場が近距離にある場合

初期投資を抑えて事業を開始したい場合

 

積替え保管ありの場合

 

特徴:

  • 運搬途中での一時保管が可能
  • 廃棄物の分別・選別が可能
  • 大量の廃棄物を効率的に処理できる
  • 厳格な施設基準と許可要件あり

 

適用場面:

  • 大量の廃棄物を効率的に処理したい場合
  • 遠距離運搬でコスト削減を図りたい場合
  • 混合廃棄物の分別により処理費用を削減したい場合

 

収集運搬業許可(積替え保管を含む)」として申請する必要があります。

積替え保管のメリット・デメリット

メリット

1. 運搬効率の大幅向上

一定量の廃棄物を蓄積してから運搬することで、運搬回数を削減できます。特に遠距離運搬では効果が顕著に現れ、運搬効率が2倍以上向上するケースも珍しくありません。

 

2. コスト削減効果

  • 燃料費の削減:運搬回数減少により燃料消費量を大幅に削減
  • 人件費の削減:ドライバーの拘束時間短縮により人件費を削減
  • 車両費の削減:車両の稼働時間短縮により維持費を削減

 

3. 環境負荷の軽減

運搬回数の削減により、CO2排出量の削減に貢献できます。環境経営の観点からも大きなメリットといえるでしょう。

4. 有価物の効率的な回収

積替え保管施設で廃棄物を分別することで、鉄やアルミなどの有価物を効率的に回収でき、新たな収益源となります。

5. 顧客サービスの向上

柔軟な収集スケジュールが組めるため、顧客のニーズに応じたサービス提供が可能になります。

デメリット

1. 初期投資の負担

積替え保管施設の設置には、土地の確保、施設の建設、設備の導入など、多額の初期投資が必要です。一般的に数千万円から数億円の投資が必要とされています。

 

2. 許可取得の複雑さ

積替え保管なしの許可と比較して、取得要件が複雑で、申請書類も膨大になります。専門知識が必要で、許可取得まで6か月から1年程度の期間を要します。

 

3. 運営管理の負担

日常的な施設管理、保管基準の遵守、帳簿管理など、運営面での負担が大きくなります。

 

4. 法的リスクの増加

保管基準違反、施設基準違反など、法的リスクが増加します。違反時の処分も重くなる傾向があります。

積替え保管許可の取得要件

基本要件

1. 積替え保管施設の確保

適切な立地条件を満たした土地の確保

都市計画法、建築基準法等の関連法令への適合

近隣住民への十分な説明と同意

 

2. 構造基準の遵守

廃棄物処理法施行令で定められた構造基準への適合

都道府県が定める独自基準への適合

消防法、建築基準法等の関連法令への適合

 

3. 保管基準の遵守

保管量の上限:1日当たりの平均搬出量の7日分以内

保管期間の制限:性状変化が生じない期間内

適切な保管方法の確保

人的要件

1. 技術管理者の配置

産業廃棄物処理業の技術管理者講習会を修了した者を配置する必要があります。

 

2. 財政的基盤の確保

事業を適切に継続するための財政的基盤が必要です。一般的に、3年分の運転資金相当額の財政能力が求められます。

許可申請の流れと必要書類

申請の流れ

1. 事前相談(3~6か月)

  • 許可行政庁との事前相談
  • 施設計画の策定
  • 関連法令の確認

 

2. 事前計画書の提出(1~2か月)

  • 施設設置計画書の提出
  • 関係書類の準備
  • 近隣住民説明会の実施

 

3. 現地審査(1~2か月)

  • 行政による現地調査
  • 施設の適合性確認
  • 必要に応じた改善指導

 

4. 本申請(1~2か月)

  • 正式な許可申請書の提出
  • 審査
  • 許可証の交付

主な必要書類

基本書類

  • 産業廃棄物収集運搬業許可申請書
  • 事業計画書
  • 施設の構造及び設備に関する書類
  • 財政能力に関する書類
     

施設関係書類

  • 土地の登記事項証明書
  • 施設の位置図・配置図・平面図
  • 施設の構造図・設備図
  • 近隣見取図

 

その他書類

  • 技術管理者に関する書類
  • 欠格要件に該当しないことの誓約書
  • 他法令許可証の写し

施設設置基準と構造要件

立地基準

1. 都市計画法への適合

工業地域、工業専用地域など、廃棄物処理施設の設置が可能な地域である必要があります。

 

2. 建築基準法への適合

用途地域の制限、建蔽率、容積率等の規制に適合する必要があります。

 

3. 近隣への配慮

住宅地、学校、病院などから適切な距離を確保し、近隣住民への影響を最小限に抑える必要があります。

 

構造基準

1. 囲い

  • 廃棄物の飛散防止のための適切な囲いの設置
  • 一般的に高さ2m以上のフェンスや塀が必要

 

2. 床面

  • 廃棄物の地下浸透防止のためのコンクリート舗装
  • 適切な排水設備の設置

 

3. 覆い

  • 降雨による廃棄物の流出防止
  • 屋根やシートによる覆いの設置


4. 掲示板

  • 施設の概要を示す掲示板の設置
  • 一般的に縦1m×2m以上のサイズが必要

運営時の注意点と法的義務

日常的な管理業務

1. 帳簿の作成・保存

  • 搬入・搬出の記録
  • 保管量の管理
  • 5年間の保存義務

 

2. 保管基準の遵守

  • 保管量の上限管理
  • 保管期間の管理
  • 適切な保管方法の実践

 

3. 施設の維持管理

  • 定期的な清掃
  • 設備の点検・修繕
  • 異常時の対応

行政への報告義務

1. 変更届

施設の変更、事業内容の変更等がある場合は、事前に変更届を提出する必要があります。

 

2. 事故報告

施設での事故、基準違反等が発生した場合は、速やかに行政に報告する必要があります。

よくある質問(Q&A)

Q1: 積替え保管許可は単独で取得できますか?

 A1: いいえ、積替え保管許可は単独では取得できません。必ず「産業廃棄物収集運搬業許可(積替え保管を含む)」として申請する必要があります。積替え保管は収集運搬業の一部として位置づけられているためです。

 

Q2: 積替え保管施設ではどのくらいの期間保管できますか?

 A2: 法的には「搬入された産業廃棄物の性状に変化が生じないうちに搬出すること」とされており、具体的な期間は定められていません。ただし、保管量については「1日当たりの平均搬出量の7日分以内」という制限があります。

 

Q3: 自社の工事で発生した廃棄物を自社敷地で保管する場合、積替え保管許可は必要ですか?

 A3: 自らが元請け業者で、自社の工事で排出された廃棄物を自社敷地で仮置きする場合は、積替え保管許可は不要です。ただし、下請け業者の廃棄物を保管する場合や、他社の廃棄物を保管する場合は許可が必要になります。

 

Q4: 積替え保管施設の設置に必要な土地の広さはどのくらいですか?

 A4: 土地の広さは取り扱う廃棄物の種類や量によって異なりますが、一般的には最低でも300㎡以上は必要とされています。大規模な施設では1,000㎡以上の敷地が必要になることもあります。

 

Q5: 積替え保管許可の取得にかかる期間はどのくらいですか?

A5: 事前相談から許可取得まで、通常6か月から1年程度の期間が必要です。施設の規模や立地条件、近隣への説明状況等によって期間は変動します。

 

Q6: 積替え保管施設で有価物を選別・売却することは可能ですか?

A6: はい、可能です。むしろ積替え保管の大きなメリットの一つとして、混合廃棄物から鉄やアルミなどの有価物を選別し、売却することで収益を上げることができます。

 

Q7: 積替え保管許可を取得した後、運営をやめたい場合はどうすればよいですか?

 

A7: 事業を廃止する場合は、廃止届を提出する必要があります。また、施設に保管されている廃棄物を適切に処理し、施設を原状回復する必要があります。

 

Q8: 近隣住民から反対された場合、許可は取得できませんか?

A8: 近隣住民の同意は法的な要件ではありませんが、多くの自治体では住民説明会の実施や合意形成を求めています。住民の理解を得るための丁寧な説明と対策が重要です。

 

Q9: 積替え保管許可の更新はどのくらいの頻度で必要ですか?

A9: 一般的に5年ごとの更新が必要です。更新時には施設の現地調査も実施されるため、継続的な適正管理が求められます。

 

Q10: 積替え保管施設で処理できない廃棄物はありますか?

A10: はい、あります。感染性廃棄物、放射性廃棄物、爆発性のある廃棄物など、特別な管理が必要な廃棄物は積替え保管施設では取り扱えません。また、許可を取得した廃棄物の種類以外は取り扱うことができません。

まとめ

積替え保管は、産業廃棄物処理業界における効率化とコスト削減の重要な手段として注目されています。しかし、その実現には厳格な法的要件を満たし、適切な施設を設置・運営する必要があります。「積替え保管あり」と「なし」の違いを正しく理解し、自社の事業形態に最適な選択をすることが重要です。積替え保管許可の取得を検討される際は、専門家に相談し、十分な準備期間を確保することをお勧めします。

適切な積替え保管施設の運営により、効率的で持続可能な産業廃棄物処理事業を展開することが可能になります。環境保全と経済効率の両立を目指し、社会に貢献する事業として発展させていくことが期待されます。

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