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産業廃棄物の動物系固形不要物とは?定義から処分方法まで解説

動物系固形不要物は産業廃棄物の一種として認識されていますが、その歴史的背景には重要な出来事があります。2001年に日本で初めて発生したBSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病)問題が契機となり、それまでリサイクルされていた牛の部位が産業廃棄物として新たに分類されることになりました。

はじめに

BSE発生以前は、と畜場から発生する牛の骨などはレンダリング業者によって肉骨粉として買い取られ、飼料や肥料として再利用されていました。しかし、BSEの発生により、農林水産省は2001年10月に肉骨粉の製造・販売の一時停止を要請し、それまでリサイクルされていた物質が廃棄物として処理する必要が生じました。この状況に対応するため、廃棄物処理法の施行令が改正され、「動物系固形不要物」という新しい産業廃棄物の区分が誕生したのです。

廃棄物処理法がスタートして約50年の間で、産業廃棄物の種類として正式に追加されたのは、この「動物系固形不要物」だけです。今回は、この特殊な産業廃棄物について、定義から区分、種類、そして適切な処分方法までを詳しく解説していきます。

行政書士:岩田雅紀
『環境系専門の専門行政書士』行政書士岩田雅紀事務所代表

産廃業許可、建設業許可申請を主な業務として取り扱っている。

資格:行政書士 天井クレーン 車両系建設機械 etc

目次

  1. 動物系固形不要物の定義
  2. 産業廃棄物としての区分
  3. 動物系固形不要物の種類と具体例
  4. 動物系固形不要物の処分方法
  5. BSE問題と動物系固形不要物の関連性
  6. 動物系固形不要物のリサイクル状況
  7. 動物に関するその他の産業廃棄物との違い
  8. まとめ

動物系固形不要物の定義

動物系固形不要物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第二条の四の二において、次のように定義されています。

 「と畜場法(昭和二十八年法律第百十四号)第三条第二項に規定すると畜場においてとさつし、又は解体した同条第一項に規定する獣畜及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律(平成二年法律第七十号)第二条第六号に規定する食鳥処理場において食鳥処理をした同条第一号に規定する食鳥に係る固形状の不要物」

 この法令上の定義は非常に長く複雑ですが、簡単に言えば、「と畜場や食鳥処理場において処理された動物の固形状の不要物」ということになります。具体的には、食肉処理場や食鳥処理場で処理をした皮、骨、内臓、羽などの使用されない固形物を指します。

 重要なのは、この「動物系固形不要物」の定義には業種による限定があることです。つまり、と畜業および食鳥処理業を発生源とした廃棄物のみがこの区分に含まれます。

産業廃棄物としての区分

産業廃棄物は事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、廃棄物処理法で定義された20種類の廃棄物を指します。動物系固形不要物は、この20種類のうちの1つに位置付けられています。

産業廃棄物の20種類の中で、動物系固形不要物は最も新しく追加されたものです。廃棄物処理法が制定されてから約30年間は産業廃棄物は19種類でしたが、2001年のBSE問題を契機に、平成13年に動物系固形不要物が20番目の産業廃棄物として追加されました。

なお、産業廃棄物の20種類のうち7種類(木くず、紙くず、繊維くず、動物のふん尿、動物の死体、動植物性残さ、動物系固形不要物)は特定の業種から発生した廃棄物に限定されています。動物系固形不要物もその一つで、と畜業と食鳥処理業から発生する廃棄物のみが該当します。

動物系固形不要物の種類と具体例

動物系固形不要物に分類される具体的なものには、以下のようなものがあります。

 

  • 『皮』: 牛、馬、豚、羊などの皮
  • 『骨』: 各種動物の骨格
  • 『内臓』: 使用されない内臓部位
  • 『羽』: 鶏やあひるなどの羽毛
  • 『毛皮』: 動物の毛皮

 

これらは牛、馬、豚、あひる、鶏、山羊、めん羊など、動物の種類は問わず、と畜場や食鳥処理場で処理された固形状の不要物であれば、すべて動物系固形不要物に分類されます。

ただし、次のような類似の廃棄物は動物系固形不要物には分類されないので注意が必要です。

  • と畜場や食鳥処理場で発生した動物の血液などの液体は、固形物でないため「廃酸・廃アルカリ」に分類されます
  • 食品加工工場から排出される同様の動物の部位は「動植物性残さ」に分類されます
  • 畜産農業から発生する動物のふん尿や死体は「動物のふん尿」「動物の死体」として別の産業廃棄物に分類されます

このように、発生源や状態により分類が異なるため、排出事業者は発生状況に応じて適切な分類を行う必要があります。

動物系固形不要物の処分方法

動物系固形不要物の処分方法は、主に以下の2種類があります。

  • 『焼却処理と埋立』: 動物系固形不要物を焼却処理し、発生した焼却灰を最終処分場に埋め立てる方法
  • 『リサイクル』: 焼却灰をセメント原料や路盤材などにリサイクルする方法

環境省の統計によると、令和3年度の動物系固形不要物の年間排出量は101千トンであり、このうち84.6%(85千トン)が再生利用され、2.7%(3千トン)が最終処分されています。これは産業廃棄物全体から見ると、リサイクル率が比較的高い廃棄物と言えます。

 

ただし、動物系固形不要物は焼却処理や埋立てにおいて、次のような点に注意が必要です。

  • 病原菌やウイルスの不活性化のため、適切な高温焼却が必要
  • 焼却施設には適切な排ガス処理設備が必要
  • 埋立処分は管理型最終処分場で行う必要がある

なお、BSE問題以前は、牛の固形不要物の多くが肉骨粉に加工された後、飼料としてリサイクルされていましたが、BSEの問題により、2001年10月以降は肉骨粉の製造と利用が制限されています。

BSE問題と動物系固形不要物の関連性

動物系固形不要物が産業廃棄物として新たに区分された背景には、2001年のBSE問題があります。BSE(牛海綿状脳症)は、牛の脳組織がスポンジ状になり、異常行動や運動失調などの症状がみられ、最終的に死に至る牛の病気です。

この病気の発症原因として、BSEに感染した牛の脳や脊髄などを原料としたエサ(肉骨粉)を他の牛に与えたことが考えられています。日本では2001年9月に初めてBSE感染牛が確認されました。

BSE問題以前は、と畜場から発生する牛の骨などはレンダリング業者によって買い取られ、肉骨粉として再利用されていました。そのため、これらは廃棄物としての扱いを受けていませんでした。しかし、BSE感染牛の確認を受けて、農林水産省は2001年10月に飼料用や肥料用の肉骨粉などの製造・販売の一時停止を要請しました。

これにより、それまで有価物として扱われていた牛の部位が廃棄物として処理する必要が生じたため、環境省は廃棄物処理法施行令を改正し、「動物系固形不要物」という新しい産業廃棄物の区分を設けたのです。

また、BSEリスクのある部位(特定危険部位)を確実に除去するため、と畜場での処理方法も厳格化されました。現在では、BSE対策の成果もあり、2003年以降に日本で生まれた牛からはBSEは確認されていません。

BSE問題とは

BSE問題(牛海綿状脳症、通称:狂牛病)は、牛の脳がスポンジ状になってしまう病気で、人にも感染する可能性があるとして世界中で大きな問題となりました。

簡単にまとめると以下のようになります。

  • 牛の脳がスポンジのようにスカスカになり、異常な行動や運動失調を起こして死に至る病気です。
  • 原因は「プリオン」という異常なタンパク質が脳に蓄積することだと考えられています。
  • 人に感染すると「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」という、やはり脳がスポンジ状になる難病を発症する可能性があります。

どうやって広がったの?

  • 主に、BSEに感染した牛の脳や脊髄などを含んだ「肉骨粉(にくこっぷん)」を、他の牛の飼料として与えたことが原因で、感染が拡大したと考えられています。

日本での経緯と対策は?

日本では2001年に初めてBSE感染牛が確認され、大きな社会問題となりました。

これを受けて、以下のような対策がとられました。

  • 飼料規制: 牛に肉骨粉を与えることを法律で禁止しました。
  • 特定危険部位(SRM)の除去: BSEの原因となるプリオンが蓄積しやすい脳や脊髄などの部位を「特定危険部位」として、と畜する際に除去し、焼却処分することが義務付けられました。
  • 全頭検査(後に変更): 一時期は全ての牛のBSE検査が義務付けられましたが、現在はリスクが低いと判断される牛については検査対象外となっています。
  • 食品安全委員会の設立: 食の安全を確保するための専門機関として、食品安全委員会が設立されました。

現在の状況は?

  • これらの対策により、BSEの発生は世界的に大幅に減少しました。
  • 現在も、肉骨粉の使用禁止や特定危険部位の除去などの対策は継続されており、牛肉の安全性は確保されています。

BSE問題は、日本の食品安全行政を大きく変えるきっかけとなった出来事であり、消費者の食に対する意識を高める上でも重要な教訓となりました。

動物系固形不要物のリサイクル状況

先述のとおり、動物系固形不要物は令和3年度の統計によれば、排出量の約84.6%がリサイクルされています。これは産業廃棄物全体の中でもリサイクル率の高い部類に入ります。

リサイクル方法としては、焼却後の灰をセメント原料や路盤材として利用する方法が主流となっています。これは「環境大臣再生利用認定制度」によって促進されています。この制度は、セメント会社等が処理業の許可や処理施設設置許可を取らなくても動物系固形不要物を受け入れられるようにするものです。

ただし、BSE問題以前のように飼料化や肥料化としてのリサイクルは、安全性の観点から制限されています。特に飼料化については、BSEのリスクを考慮して慎重に取り扱われています。

動物に関するその他の産業廃棄物との違い

動物系固形不要物と混同されやすい動物に関する産業廃棄物には、以下のようなものがあります。

『動植物性残さ』

動植物性残さとは、食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業などから排出される、動植物を原料とした固形状の廃棄物を指します。具体的には、あめかすやのりかす、醸造かす、発酵かす、魚・獣のあらな、骨・皮、貝殻、羽毛などが該当します。

令和3年度の動植物性残さの排出量は2,317千トンで、このうち65.2%がリサイクルされています。動植物性残さには栄養が多く含まれているため、肥料化・飼料化のほか、メタン発酵によるバイオマスエネルギーへの変換なども行われています。

動物系固形不要物との主な違いは、発生源の業種にあります。また、処理方法においても、動物系固形不要物よりも多様なリサイクル方法が可能である点も異なります。

『動物のふん尿・死体』

動物のふん尿・死体は、畜産農業から排出される牛・馬・豚・鶏・山羊・めん羊などのふん尿や死体を指します。

令和3年度の動物のふん尿の排出量は81,271千トンで、このうち95%がリサイクルされています。一方、動物の死体の排出量は168千トンで、再生利用率は50%未満にとどまっています。

動物のふん尿は栄養素が多いため、肥料としてリサイクルされたり、バイオマス資源として活用されたりしています。動物の死体については、動物系固形不要物と同様に焼却処理後、埋め立てやセメント原料・路盤材へのリサイクルが行われています。

動物系固形不要物との違いは、こちらも発生源の業種にあります。また、動物のふん尿はリサイクル率が非常に高い点も特徴です。

まとめ

動物系固形不要物は、と畜場や食鳥処理場から発生する皮、骨、内臓、羽などの固形状の不要物を指す産業廃棄物です。2001年のBSE問題を契機に、廃棄物処理法施行令が改正され、それまで19種類だった産業廃棄物に新たに加わりました。

処分方法としては、焼却処理後の焼却灰を埋め立てる方法と、セメント原料や路盤材としてリサイクルする方法があります。現在は排出量の約84.6%がリサイクルされており、産業廃棄物全体の中でもリサイクル率は比較的高いと言えます。

動物系固形不要物は、発生源や状態により、動植物性残さや動物のふん尿・死体、廃酸・廃アルカリなどの別の産業廃棄物に分類されることもあります。排出事業者は、発生状況に応じて適切な分類を行うことが重要です。

BSE問題を契機に生まれた動物系固形不要物という区分は、公衆衛生と環境保全の観点から適切な処理方法が求められる特殊な産業廃棄物です。今後も安全かつ効率的な処理とリサイクルの推進が期待されています。

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