定義から処分まで徹底解説

産廃業者の皆様、または建設業者の方々、産廃許可申請を手掛けている行政書士の岩田です。今回は産業廃棄物の『廃プラスチック類』を解説しました。どうぞ必ず最後までお読み頂ければ、廃プラの事を少し理解出来ると思います。

行政書士:岩田雅紀
『環境系専門の専門行政書士』行政書士岩田雅紀事務所代表
産廃業許可、建設業許可申請を主な業務として取り扱っている。
資格:行政書士 天井クレーン 車両系建設機械 etc
目次
- はじめに:産業廃棄物としての廃プラスチック類
- 廃プラスチック類の定義と区分
- 廃棄物処理法における位置づけ
- 産業廃棄物と一般廃棄物の違い
- 廃プラスチックの法的定義
- 廃プラスチック類の種類と具体例
- 主な種類(PP、PE、PVC、PSなど)
- 形状別分類(固形、液状など)
- 業種別に見る主な廃プラスチック
- 廃プラスチック類をめぐる法規制と動向
- バーゼル法と輸出規制
- プラスチック資源循環促進法の概要
- 国内外の規制動向
- 廃プラスチック類の処分方法
- マテリアルリサイクル
- ケミカルリサイクル
- サーマルリサイクル
- 埋立処分
- 企業の廃プラスチック管理のポイント
- 分別・保管の注意点
- 委託処理の手続きと注意点
- コスト削減と環境負荷低減の両立
- 廃プラスチックの課題と今後の展望
- 海洋プラスチック問題
- 国内処理能力の向上
- 新たなリサイクル技術の動向
- まとめ:持続可能な廃プラスチック管理に向けて
- よくある質問(FAQ)
初めに:産業廃棄物としての廃プラスチック類
プラスチックは現代社会に不可欠な素材として広く普及していますが、事業活動から排出される廃プラスチックは産業廃棄物として適切な処理が求められています。本記事では、産業廃棄物としての廃プラスチック類について、定義、区分、種類、処分方法を網羅的に解説します。
企業の環境担当者が知っておくべき知識や、2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法への対応など、実務に役立つ情報を提供します。廃プラスチック類の適切な管理は、企業のコンプライアンス遵守だけでなく、環境保全やSDGsへの貢献にもつながる重要な取り組みです。
廃プラスチック類の定義と区分
廃棄物処理法における位置づけ
廃棄物処理法では、廃棄物を「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の2種類に大別しています。廃プラスチック類は、廃棄物処理法で定められた20種類の産業廃棄物の一つに指定されており、事業活動に伴って排出されるプラスチック廃棄物全般を指します。
産業廃棄物としての廃プラスチック類は、適正な処理が法律で義務付けられており、排出事業者には排出抑制や再資源化の責任があります。また、処理を委託する場合も、許可を持つ業者との契約やマニフェスト(産業廃棄物管理票)の管理など、一定の手続きが必要です。
産業廃棄物と一般廃棄物の違い
廃プラスチックは「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の両方に存在しますが、その区分は排出源によって決まります。
- 産業廃プラスチック:工場や店舗などの事業所から事業活動に伴って排出されるプラスチックごみ
- 一般廃プラスチック:主に家庭から排出されるプラスチックごみ
ただし、事業所から排出される廃プラスチックでも、従業員の弁当ガラやペットボトルなど、事業活動と直接関係ないものについては、自治体によって取扱いが異なる場合があります。判断に迷う場合は、事業所を管轄する自治体に確認することが重要です。
廃プラスチックの法的定義
環境省の通知によると、廃プラスチック類の定義は「合成樹脂くず、合成繊維くず、合成ゴムくず(廃タイヤを含む)等固形状・液状のすべての合成高分子系化合物」とされています。この定義からわかるように、廃プラスチック類は単にプラスチック製容器包装だけでなく、合成ゴムや合成繊維なども含む幅広い範囲を指します。
廃プラスチック類の種類と具体例
主な種類(PP、PE、PVC、PSなど)
廃プラスチック類を構成する主な樹脂の種類には以下のようなものがあります:
- ポリエチレン(PE):レジ袋やラップフィルムなど
- ポリプロピレン(PP):食品容器、部品ケース、PPバンドなど
- ポリ塩化ビニル(PVC):パイプ、建材、電線被覆材など
- ポリスチレン(PS):発泡スチロールトレイ、梱包材など
- ポリエチレンテレフタラート(PET):PETボトル、繊維など
形状別分類(固形、液状など)
廃プラスチック類は形状によっても分類できます:
- 固形状:製品そのものや成形不良品、切削くずなど
- フィルム状:包装材、ラップ、袋など
- 発泡状:緩衝材、断熱材など
- 粉末状:微細な切削くずや研磨くずなど
- 液状:塗料かす、接着剤かすなど(固形状になったものを含む)
業種別に見る主な廃プラスチック
業種によって排出される主な廃プラスチック類は異なります:
- 製造業:成形不良品、端材、包装材など
- 建設業:プラスチック製建材、断熱材、塩ビパイプなど
- 流通・小売業:包装フィルム、パレット、コンテナなど
- 医療機関:医療用プラスチック製品、注射器など(感染性廃棄物として扱われる場合もある)
- 農業:農業用ビニール、農薬の容器など
日本における廃プラスチック製品の内訳では、PETボトルが約36%と最も多く、次いで包装用フィルム(約18%)、家電製品の筐体(約13%)、物流資材(約10%)などが続いています。
廃プラスチック類をめぐる法規制と動向
バーゼル法と輸出規制
バーゼル法(特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律)は、有害廃棄物の国境を越えた移動とその処分を規制する国際条約「バーゼル条約」の国内法です。
2021年の法改正により、リサイクルに適さない汚れた廃プラスチックが規制対象に追加されました。これにより、以前は規制対象外だった多くの廃プラスチックが輸出入に際して事前通告や同意取得が必要となり、国内処理の需要が高まっています。
プラスチック資源循環促進法の概要
2022年4月に施行された「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(通称:プラスチック資源循環促進法)は、プラスチックのライフサイクル全体での資源循環を促進するための法律です。
同法では「プラスチック使用製品」「使用済みプラスチック使用製品」「プラスチック使用製品廃棄物」「プラスチック副産物」という4つの定義が設けられ、それぞれに対する取り組みが規定されています。特に事業者に対しては、プラスチック使用製品産業廃棄物等の排出抑制や再資源化等が求められています。
国内外の規制動向
プラスチック削減に向けた規制は世界的に強化される傾向にあります:
- EU:使い捨てプラスチック製品の規制強化、プラスチック税の導入
- 中国:2017年末に廃プラスチックの輸入を禁止
- 日本:レジ袋有料化、プラスチック資源循環促進法の施行
- 今後の見通し:2025年には資源有効利用促進法の改正が予定されており、再生材の利用義務の拡充などが見込まれています
廃プラスチック類の処分方法
廃プラスチック類の処分方法は、大きく分けて以下の4つがあります。
マテリアルリサイクル
廃プラスチックの材質そのものを活かし、物理的に処理して他の製品や別のプラスチック材料として再利用する方法です。
特徴:
- 比較的低コストで再利用可能
- 品質管理が重要
- 元の素材に近い形で再利用可能
主な再生製品例:
- 衣類(繊維製品)
- 包装用トレイ
- コンテナ
- 土木建築素材
ケミカルリサイクル
廃プラスチックを化学的に分解し、原料レベルに戻して再利用する方法です。
特徴:
- 高品質な再生が可能
- コストがかかる
- 幅広い再資源化が可能
主な再生方法例:
- 高炉の還元剤として利用
- モノマー化してペットボトルや包装容器に再生
- 油化処理して燃料化
- ガス化処理して化学工業原料の生成
サーマルリサイクル
廃プラスチックを焼却し、発生する熱エネルギーを回収・利用する方法です。
特徴:
- 他の方法でリサイクルできない廃プラでも処理可能
- 熱エネルギーとして有効活用できる
- 焼却時の有害物質対策が必要
主な利用方法:
- 発電・温水利用
- 固形燃料(RPF, RDF)化
埋立処分
リサイクルが困難な廃プラスチックに対して行われる最終処分方法です。
特徴:
- 最終手段として位置づけられる
- 埋立地の容量に限りがある
- 環境負荷が大きい
- 圧縮・減容化が重要
企業の廃プラスチック管理のポイント
分別・保管の注意点
適切な廃プラスチック管理の第一歩は、排出源での分別です:
- 種類別の分別:リサイクル可能なものと不可能なものに分ける
- 汚れの除去:付着物や異物を可能な限り除去する
- 保管場所の確保:風で飛散しないよう適切に管理する
- 水濡れ防止:リサイクル品質維持のため、雨水等から保護する
委託処理の手続きと注意点
産業廃棄物としての廃プラスチック処理を委託する際の重要事項:
- 許可業者の選定:産業廃棄物処理業の許可を持つ業者を選ぶ
- 書面による契約:書面で直接契約を結ぶ
- マニフェスト管理:産業廃棄物管理票(マニフェスト)を適切に運用する
- 最終処分の確認:最終処分まで適正に行われたことを確認する
コスト削減と環境負荷低減の両立
廃プラスチック処理のコスト削減と環境負荷低減を両立するポイント:
- 発生抑制:使用量そのものの削減
- 再利用推進:社内での再利用システムの構築
- 高付加価値リサイクル:単一素材化や汚れ防止による有価物化
- 処理業者の選定:適正価格で高度なリサイクルを行う業者の選定
廃プラスチックの課題と今後の展望
廃プラスチック処理のコスト削減と環境負荷低減を両立するポイント:
- 発生抑制:使用量そのものの削減
- 再利用推進:社内での再利用システムの構築
- 高付加価値リサイクル:単一素材化や汚れ防止による有価物化
- 処理業者の選定:適正価格で高度なリサイクルを行う業者の選定
海洋プラスチック問題
海に流出したプラスチックごみによる海洋汚染は世界的な環境問題となっています。世界で年間約800万トンのプラスチックが海洋に流出し、2050年には海洋中のプラスチックの重量が魚類を超えるという試算もあります。
マイクロプラスチックによる生態系への影響も懸念されており、国際社会では「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」に代表される海洋プラスチックごみゼロを目指す取り組みが進められています。
国内処理能力の向上
中国をはじめとする輸出先国の輸入規制により、日本国内での廃プラスチック処理が急務となっています。今後は以下のような取り組みが重要です:
- 処理施設の増強
- 高度なリサイクル技術の開発・実用化
- 地域循環圏の構築
- 産学官連携による技術革新
新たなリサイクル技術の動向
廃プラスチック問題の解決に向けた技術革新も進んでいます:
- ケミカルリサイクルの高度化:触媒技術の進歩によるエネルギー効率の向上
- バイオプラスチック開発:環境負荷の少ない生分解性プラスチックの普及
- AI・ロボット技術の活用:選別精度の向上と省人化
- トレーサビリティ向上:ブロックチェーン技術などを活用した廃棄物追跡システム
まとめ:持続可能な廃プラスチック管理に向けて
産業廃棄物としての廃プラスチック類は、その定義や種類を正しく理解し、法律に則った適切な処理が求められます。特に近年は国内外の規制強化や社会的な環境意識の高まりにより、リサイクルの重要性が増しています。
企業には、廃プラスチックの発生抑制から適正処理まで、ライフサイクル全体を通した責任ある管理が求められています。そのためには、最新の法規制や技術動向を把握し、社内体制を整備することが重要です。
持続可能な社会の実現に向けて、「選んで、減らして、リサイクル」を基本とした廃プラスチック管理を進めていきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 廃プラスチック類の処理費用の相場はいくらですか?
A. 廃プラスチック類の処理費用は種類や状態、地域によって異なりますが、一般的には15〜100円/kgが相場です。汚れや混合状態によって価格が変動するため、詳細は産業廃棄物処理業者に確認することをお勧めします。
Q. 事業所から出る弁当ガラやペットボトルは一般廃棄物として処分できますか?
A. 事業活動と直接関係のない弁当ガラやペットボトルなどは、自治体によって産業廃棄物または事業系一般廃棄物と判断が分かれます。事業所の所在地を管轄する自治体に確認することが必要です。
Q. 廃プラスチック類は業種による指定がありますか?
A. 産業廃棄物としての廃プラスチック類は業種による指定はなく、事業活動から排出されるプラスチックごみは業種を問わずすべて廃プラスチック類に該当します。
Q. プラスチック資源循環促進法で企業に求められることは何ですか?
A. プラスチック資源循環促進法では、製品の設計・製造段階での環境配慮、排出事業者による排出抑制・再資源化、製造・販売事業者による自主回収などが求められています。特に多量排出事業者には計画策定や報告義務があります。
Q. 廃プラスチックのリサイクル率を上げるにはどうしたらよいですか?
A. リサイクル率向上には、排出源での適切な分別、単一素材化の推進、汚れの除去、トレーサビリティの確保などが有効です。また社内教育を通じて従業員の意識向上を図ることも重要です。
産業廃棄物としての廃プラスチックは適切に処理することで、環境負荷の低減だけでなく、資源の有効活用にもつながります。本記事が皆様の廃プラスチック管理の参考になれば幸いです。
最新の法規制や処理技術は日々変化していますので、定期的に情報をアップデートすることをお勧めします。