建設業における産業廃棄物収集運搬業許可の重要性

建設業者の皆様、産廃を中心とした申請を手掛けている行政書士の岩田です。今回は建設業者さんが産業廃棄物収集運搬業許可を取得すると、どのようなことが起こるのか、メリットや手続き内容をご説明したいと思います。どうぞ必ず最後までお読み頂ければ、前向きに許可取得まで進める内容となっております。

行政書士:岩田雅紀
『環境系専門の専門行政書士』行政書士岩田雅紀事務所代表
産廃業許可、建設業許可申請を主な業務として取り扱っている。
資格:行政書士 天井クレーン 車両系建設機械 etc
目次
- 許可が必要な理由と法律的背景
- 建設業における産業廃棄物処理のポイント
- 下請負人との契約における注意事項
- 収集運搬許可取得のメリットとは?
- 許可取得の手続き概要
- 取得にかかる期間と注意点
- 弊所に依頼をするメリット
- 最後に
産業廃棄物とは?建設業での取り扱い

画像提供:(株)平瀬商店
産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類の6種類と、政令で定めるその他14種類の、計20種類を指します。これらは、一般家庭から出るごみ(一般廃棄物)とは異なり、法律で定められた特別な処理基準に従って処理する必要があります。
建設業における産業廃棄物の取り扱い
建設業は、事業活動に伴い多種多様な産業廃棄物を排出する業種です。具体的には以下のようなものが挙げられます。
建設業から排出される主な産業廃棄物
- がれき類: コンクリート破片、アスファルト破片、レンガ破片など(工作物の新築、改築、除去に伴って生じたもの)
- 建設汚泥: 掘削工事や基礎工事などで発生する泥状のもの
- 廃プラスチック類: 梱包材、断熱材、養生シート、 配管材、 廃タイヤなど
- 木くず: 建設資材の端材、解体材など(工作物の新築、改築、除去に伴って生じたもの)
- 金属くず: 鉄筋、鉄骨、配線くず、ボルト、ナットなど
- ガラスくず・コンクリートくず(工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたものを除く。)及び陶磁器くず: タイル、衛生陶器の破片、ガラスくずなど
- 紙くず: 建設資材の包装紙、設計図面、事務用紙など(建設業に係るもの)
- 繊維くず: ロープ、シート、布製の養生材など(建設業に係るもの)
- 廃油: 建設機械の廃油、塗料の残渣など
- 廃酸・廃アルカリ: 洗浄廃液、メッキ廃液など(使用する場合)
- 燃え殻: 焼却施設がある場合
- ばいじん: 集じん施設がある場合
- 鉱さい: 基礎工事などで発生する場合
- ゴムくず: ゴムホースなど
建設業における産業廃棄物処理のポイント
建設業における産業廃棄物処理のポイント
建設業においては、排出する産業廃棄物の種類に応じて、以下の点に注意して適切に処理する必要があります。
- 分別: 産業廃棄物の種類ごとに分別して保管することが基本です。混合廃棄物の場合は、可能な限り分別し、処理業者に引き渡す必要があります。
- 保管: 産業廃棄物が飛散・流出しないように、適切な容器に入れたり、シートで覆うなどの措置を講じます。また、保管場所には掲示板を設置し、廃棄物の種類や管理責任者などを明示する必要があります。
- 収集・運搬: 産業廃棄物の収集・運搬は、許可を受けた専門の業者に委託するのが一般的です。自社で運搬する場合は、運搬車両に許可証の写しや必要事項を記載した書面を備え付ける必要があります。
- 処理・処分: 産業廃棄物は、許可を受けた処理業者によって、中間処理(焼却、破砕、脱水など)や最終処分(埋め立てなど)が行われます。
- マニフェスト(産業廃棄物管理票): 産業廃棄物の排出から最終処分までの一連の流れを管理するために、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付・管理が義務付けられています。
排出事業者責任
建設業者は、自らが排出した産業廃棄物について、適正な処理が行われるまで責任を負う「排出事業者責任」があります。そのため、処理を委託する業者を選ぶ際には、許可の有無や処理能力などを十分に確認することが重要です。
産廃収集運搬業許可を下請けが取らなければならない理由
下請負人が産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しなければならない主な理由は、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)における以下の原則に基づいています。
1. 業としての収集・運搬には許可が必要:
- 廃棄物処理法第14条第1項において、「産業廃棄物の収集若しくは運搬を業として行おうとする者は、都道府県知事(中略)の許可を受けなければならない」と定められています。
- ここでいう「業として行う」とは、反復継続して、社会性をもって行う事業活動を指します。下請負人が、元請業者から委託を受け、継続的に産業廃棄物の収集・運搬を行う行為は、まさに「業として行う」に該当します。
2. 排出事業者責任と処理責任の分離:
- 廃棄物処理法では、産業廃棄物の排出事業者に適正な処理を行う責任(排出事業者責任)があると定められています(同法第3条)。
- しかし、排出事業者が必ずしも自ら収集・運搬を行う必要はなく、許可を受けた専門の業者に委託することができます。
- 下請負人が元請業者から産業廃棄物の収集・運搬を請け負う場合、下請負人は排出事業者(元請業者)から委託を受けて、その業務を「業として行う」立場になるため、許可が必要となるのです
お問合せの殆どのお客様が建設会社さんで下請けをされている方です。「建設業をしているが、収集運搬が必要になった」「建設工事で出るゴミを処理場にもって行きたい」、排出事業者なら許可は必要ありません(備え付けの書類等は必要)が、下請けで出たゴミを運搬すると、収集運搬を取って置かないと運べません。元請け会社であっても、収集運搬は持っている方が殆どなので、「産廃ゴミを運ぶ=収集運搬を取る」こんな考え方でも、宜しいのではないかと思います。(ヒアリングの際はしっかりと、必要不必要のお話しは致します)
- 収集運搬許可取得のメリットとは?

産業廃棄物収集運搬業の許可を取得することには、事業者にとって多くのメリットがあります。主なものを以下に挙げます。
1. 法令遵守と事業継続性の確保:
- 無許可営業のリスク回避: 許可を取得せずに産業廃棄物の収集・運搬を行うことは、廃棄物処理法に違反する行為であり、行政処分(事業停止命令、許可取消しなど)や刑事罰(懲役刑や罰金刑)の対象となります。許可を得ることで、これらのリスクを回避し、安心して事業を継続できます。
- 法令遵守による信頼性向上: 法令を遵守していることは、顧客や取引先からの信頼を得る上で非常に重要です。コンプライアンス意識の高い企業として評価され、新たなビジネスチャンスにつながる可能性もあります。
2. 事業範囲の拡大と収益機会の創出:
- 新たな顧客の獲得: 許可を取得することで、自社が排出した産業廃棄物だけでなく、他社の産業廃棄物の収集・運搬を請け負うことが可能になります。これにより、事業範囲が拡大し、新たな収益源を確保できます。
- 入札参加資格の取得: 公共工事など、産業廃棄物の収集・運搬に関する業務が含まれる入札案件では、許可取得が参加資格の要件となっている場合があります。許可を得ることで、これらの入札に参加し、事業機会を広げることができます。
3. 環境保全への貢献と企業イメージの向上:
- 適正な処理への貢献: 許可業者は、廃棄物処理法に基づいた適切な収集・運搬方法を遵守することが義務付けられています。これにより、環境汚染のリスクを低減し、資源の有効活用に貢献することができます。
- 企業イメージの向上: 環境保全に積極的に取り組む企業としてのイメージ向上につながります。SDGsへの貢献など、社会的な責任を果たす企業として評価が高まります。
4. 専門知識・技術の習得と業務効率化:
- 許可取得過程での知識習得: 許可取得の過程で、廃棄物に関する法規制、処理方法、安全管理など、専門的な知識や技術を習得することができます。
- 適正な業務遂行による効率化: 法に基づいた適切な方法で収集・運搬を行うことで、無駄なコストやトラブルを避けることができ、結果的に業務の効率化につながります。
5. 関係機関との連携強化:
- 行政機関との良好な関係構築: 許可取得や更新の手続きを通じて、行政機関との関係を構築することができます。これにより、最新の情報や指導をスムーズに得やすくなります。
- 同業者団体への参加: 許可業者を対象とした団体に加入することで、業界の最新動向や技術情報を共有したり、同業者とのネットワークを構築したりすることができます。
- 許可取得の手続き概要

産業廃棄物収集運搬業の許可取得手続きは、都道府県または政令市によって若干異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。ここでは東京都を例に概要を説明します。
【東京都における産業廃棄物収集運搬業許可取得手続きの概要】
1. 事前準備・確認:
- 申請要件の確認: 申請者(法人または個人)や役員、事業所の要件、経理的基礎、講習会の受講など、許可を受けるための要件を満たしているかを確認します。東京都のウェブサイトなどで詳細な要件が公開されています。
- 講習会の受講: 申請者または事業所の代表者、あるいは廃棄物処理に関する知識を有する役員が、指定された講習会(新規許可講習会)を受講する必要があります。修了証は申請時に必要となります。
- 事業計画の作成: 収集する産業廃棄物の種類、運搬の方法、保管場所(必要な場合)、運搬車両、従業員数など、具体的な事業計画を作成します。
- 必要書類の準備: 申請書、事業計画書、登記事項証明書(法人の場合)、住民票(個人の場合)、財務諸表、講習会修了証の写し、運搬車両の写真・車検証の写し、事業所の地図・写真、保管場所に関する書類(賃貸契約書など)、その他必要書類を収集します。
2. 申請書類の作成・提出:
- 申請書の作成: 東京都のウェブサイトから申請書様式をダウンロードし、必要事項を正確に記入します。
- 添付書類の準備: 事前準備で収集した必要書類を、東京都の指示に従って整理・コピーします。
- 申請書類の提出: 作成した申請書と添付書類を、東京都庁の環境局資源循環推進部産業廃棄物対策課の窓口に持参または郵送で提出します。事前に予約が必要な場合もありますので、東京都の指示を確認してください。
- 申請手数料の納付: 申請時に手数料を納付する必要があります。金額や納付方法は、東京都のウェブサイトで確認できます。
取得にかかる期間と注意点
産業廃棄物収集運搬業の許可取得にかかる期間は、申請する自治体(都道府県または政令市)や申請書類の準備状況、審査の混み具合などによって大きく変動します。一般的には、数ヶ月単位で考える必要があります。
一般的な期間の目安(東京都の場合):
- 書類提出から許可証交付まで:3ヶ月以上(標準処理期間60日)
ただし、これはあくまで目安であり、以下の要因によって前後する可能性があります。
- 申請書類の不備: 記載漏れや誤り、添付書類の不足などがあると、補正のために時間がかかり、許可までの期間が長引きます。
- 事業計画の内容: 収集・運搬する産業廃棄物の種類や量、運搬方法、保管場所など、事業計画の内容が複雑な場合、審査に時間がかかることがあります。
- 申請件数の混雑状況: 年度末や制度改正時など、申請件数が集中する時期は審査に時間がかかる傾向があります。
- 申請者の準備期間: 申請書類の収集や作成に時間がかかると、そもそも申請のタイミングが遅れてしまいます。
許可取得における注意点:
- 余裕を持ったスケジュール: 上記の期間を目安に、事業開始予定日から逆算して、十分な余裕をもって準備と申請を行いましょう。
- 正確かつ丁寧な書類作成: 不備のない正確な書類を作成することが、スムーズな審査の第一歩です。不明な点は事前に自治体の担当窓口や専門家に確認しましょう。
- 講習会の早期受講: 申請者または必要な役員は、必ず事前に指定された講習会を受講し、修了証を取得しておく必要があります。講習会のスケジュールも確認し、早めに受講しましょう。※特に年度初めの4月~7月は講習会の予約が殺到して、一瞬で予約が埋まります。ご注意ください。
- 事業計画の具体性: 収集する産業廃棄物の種類、運搬ルート、保管方法などを具体的に計画し、書類に落とし込むことが重要です。
- 財政基盤の証明: 安定した事業運営を行うための財政基盤があることを証明する必要があります。財務諸表などの提出が求められますので、早めに準備しましょう。
- 欠格要件の確認: 申請者や役員が、廃棄物処理法に定められた欠格要件に該当しないことを確認する必要があります。
- 最新情報の確認: 制度や手続きは変更される可能性がありますので、必ず申請先の自治体の最新情報を確認するようにしましょう。
- 専門家の活用: 特にこれが大事!決して簡単ではない申請です。申請書類の作成や手続きに不安がある場合は、行政書士などの専門家に相談することを検討しましょう。時間と労力を節約できる可能性があります。
これらの期間の目安と注意点を踏まえ、計画的に許可取得の準備を進めてください。特に、書類の準備には時間がかかることが多いので、早めに取り掛かることが重要です。
弊所に依頼するメリット

全国対応!
近年では、「郵送による申請」や「電子申請」が出来る地自体がかなり多くなり、色んな場所から申請をすることが出来る様になりました!ご近所に、建設業や産廃業に詳しい事務所が見つけられない方など、お困りの際は弊所を頼って頂きたいと思います。また郵送申請・電子申請を有効に使うことにより、弊所行政書士が官公署に赴く手間が省けるということで、費用面も抑えられる仕組みをご提供出来ます。
内容 | 報酬 |
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新規許可申請(郵送・電子申請対応)全国一律※一部郵送対応外アリ | 税込88,000円 |
申請手数料(新規許可申請) | 81,000円 |
最後に
産廃収集運搬の許可を取得すると、更新や車両の変更など変更届も行わなければならないので、専門家にお任せ頂ければ、最新の法令アドバイス、申請状況の管理や変更届の代行など行います。面倒なことは、専門家に任せるのが一番です!どうぞお問合せから、お進みください!