はじめに

近年、日本の建設業界において屋根工事への注目が高まっています。特に、気候変動による異常気象の増加、建物の長寿命化への意識の高まり、太陽光発電設備の普及などにより、屋根工事の重要性は飛躍的に向上しています。
また、2020年の建設業法改正により、建設業許可制度にも大きな変更がありました。経営業務の管理責任者から「常勤役員等」への変更、専任技術者から「営業所技術者」への名称変更など、新しい制度への理解が求められています。
このような時代背景の中で、屋根工事業で建設業許可を取得することは、事業の信頼性向上や受注機会の拡大に直結する重要な要素となっています。本記事では、行政書士の立場から、屋根工事業の建設業許可について、申請代行・申請サポートの経験を活かして詳しく解説いたします。
目次
- 屋根工事業とは?基本的な定義と概要
- 屋根工事業の業種区分と具体的な工事内容
- 屋根工事の種類と分類
- 建設業許可取得のための基本要件
- 常勤役員等の要件詳細
- 営業所技術者の要件詳細
- 建設業許可申請の流れと手続き方法
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
屋根工事業とは?基本的な定義と概要
屋根工事業は、建設業法で定められた29業種のうちの一つで、建設工事の業種区分上では「屋根工事」に分類されます。建設業法施行令第1条の別表第1において、屋根工事業は「瓦、スレート、金属薄板等により屋根をふく工事」と定義されています。
この定義は一見シンプルですが、実際の工事内容は多岐にわたり、現代の建築技術の発展とともに、その範囲も拡大しています。屋根工事業者は、建物の防水性、耐久性、断熱性を確保するとともに、美観の向上にも貢献する重要な役割を担っています。
屋根工事業で建設業許可を取得するメリットは以下の通りです:
- 500万円以上の工事を請け負うことができる
- 元請業者からの信頼度が向上する
- 公共工事への入札参加が可能になる
- 金融機関からの融資を受けやすくなる
- 会社の信頼性・対外的イメージが向上する
建設業許可の申請代行や申請サポートを検討される際は、これらのメリットを十分に理解した上で、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
屋根工事業の業種区分と具体的な工事内容
屋根工事の基本的な分類
屋根工事業は、使用する材料や施工方法により、以下のような工事に分類されます:
瓦工事
- 粘土瓦、セメント瓦、金属瓦の施工
- 瓦の葺き替え、補修工事
- 瓦屋根の防水処理
スレート工事
- 天然スレート、人工スレートの施工
- コロニアル、カラーベストなどの化粧スレート工事
- スレート屋根の塗装工事
金属屋根工事
- ガルバリウム鋼板、銅板、アルミニウム板等の施工
- 立平葺き、横葺き、縦葺き工事
- 金属屋根の断熱工事
その他の屋根工事
- 屋根防水工事(ウレタン防水、シート防水等)
- 屋根断熱工事
- 天窓設置工事
- 屋根一体型太陽光パネル設置工事
他業種との区分について
屋根工事業と他業種との区分で特に注意が必要なのは以下の点です:
板金工事業との区分
- 屋根に金属薄板を施工する場合は屋根工事業
- 建物の外壁、雨樋等に金属薄板を施工する場合は板金工事業
防水工事業との区分
- 屋根面の防水工事は屋根工事業に含まれる場合がある
- ベランダ、地下室等の防水工事は防水工事業
これらの区分は申請代行を行う際の重要なポイントとなりますので、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
屋根工事の種類と分類
新築屋根工事
新築建物における屋根工事では、建物全体の設計に基づいた屋根材の選定と施工を行います。
主な工事内容:
- 屋根下地工事(野地板、ルーフィング施工)
- 屋根材の選定・施工
- 雨樋工事
- 屋根換気設備の設置
屋根改修工事
既存建物の屋根材の劣化や損傷に対応する工事です。
主な工事内容:
- 屋根材の葺き替え工事
- カバー工法による改修
- 部分的な補修工事
- 断熱材の追加・更新
屋根塗装工事
屋根材の保護と美観向上を目的とした工事です。
主な工事内容:
- 下地処理(高圧洗浄、補修)
- 下塗り、中塗り、上塗りの塗装工事
- 付帯部分(雨樋、破風板等)の塗装
屋根防水工事
陸屋根や勾配の緩い屋根における防水工事です。
主な工事内容:
- ウレタン防水工事
- FRP防水工事
- シート防水工事
- アスファルト防水工事
これらの工事を適切に実施するためには、建設業許可の取得が不可欠です。申請サポートを通じて、スムーズな許可取得をお手伝いいたします。
建設業許可取得のための基本要件
建設業許可を取得するためには、建設業法で定められた以下の5つの要件を満たす必要があります。
要件1:常勤役員等の設置
法人の場合は常勤の役員、個人事業主の場合は事業主本人または支配人のうち、建設業の経営経験を有する者を設置する必要があります。
要件2:営業所技術者の設置
許可を受けようとする建設業に関して、営業所ごとに営業所技術者(旧:専任技術者)を常勤で設置する必要があります。
要件3:財産的基礎・金銭的信用
一般建設業許可の場合、以下のいずれかを満たす必要があります:
- 自己資本が500万円以上あること
- 500万円以上の資金調達能力があること
- 許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して建設業を営業した実績があること
要件4:欠格要件に該当しないこと
法人の役員や個人事業主が、建設業法で定められた欠格要件に該当しないことが必要です。
要件5:適切な社会保険への加入
雇用保険、健康保険、厚生年金保険への適切な加入が必要です。
これらの要件確認は複雑な場合があるため、申請代行を依頼することで確実な許可取得が可能になります。
常勤役員等の要件詳細
2020年の建設業法改正により、従来の「経営業務の管理責任者」から「常勤役員等」に変更されました。この変更により、要件が柔軟になり、より多くの企業が建設業許可を取得しやすくなっています。
常勤役員等になることができる者
法人の場合:
- 業務を執行する社員
- 取締役
- 執行役
- これらに準ずる者
個人事業主の場合:
- 事業主本人
- 支配人
常勤役員等の経験要件
以下のいずれかの要件を満たす必要があります:
パターン1:建設業での役員経験
- 建設業において5年以上の役員経験
- 個人事業主としての経験も含む
パターン2:建設業での執行役員経験
- 建設業において5年以上、役員に次ぐ職制上の地位にあった経験
- 経営業務の執行について総合的な責任を負った経験
パターン3:建設業での役員経験(6年)+ 補佐経験
- 建設業において6年以上の役員経験
- 建設業の経営業務について総合的に管理した経験
パターン4:適切な指導監督の下での経営経験
- 常勤役員等を直接に補佐する業務に従事した経験(5年以上)
- 建設業の財務管理、労務管理、業務運営の業務経験(5年以上)
常勤役員等のサポート要件
常勤役員等を直接補佐する者として、以下の要件を満たす者の設置も求められる場合があります:
- 財務管理業務の経験(5年以上)
- 労務管理業務の経験(5年以上)
- 業務運営業務の経験(5年以上)
申請サポートでは、これらの複雑な要件確認を専門家が代行し、最適な申請戦略をご提案いたします。
営業所技術者の要件詳細
営業所技術者(旧:専任技術者)は、建設工事の技術的な適正を確保するため、営業所ごとに設置が義務付けられています。屋根工事業における営業所技術者の要件は以下の通りです。
一般建設業許可における営業所技術者の要件
以下のいずれかに該当する者を、各営業所に常勤で設置する必要があります:
実務経験による要件
- 屋根工事業に関する実務経験を10年以上有する者
- 実務経験には、指導監督的実務経験も含まれる
- 実務経験の証明には、工事請負契約書、注文書、工事台帳等が必要
資格による要件
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(仕上げ)
- 技能士(かわらぶき、建築板金)
- その他国土交通大臣が認定した資格
学歴+実務経験による要件
- 指定学科を卒業し、実務経験を有する者
- 大学・高等専門学校卒業:3年以上の実務経験
- 高等学校卒業:5年以上の実務経験
特定建設業許可における営業所技術者の要件
屋根工事業で特定建設業許可を取得する場合、以下のいずれかに該当する者が必要です:
- 1級建築施工管理技士
- 技能士(かわらぶき、建築板金)
- 実務経験10年以上
営業所技術者の常勤性
営業所技術者は、その営業所に常勤していることが必要です。常勤性の確認書類として以下が求められます:
- 健康保険被保険者証
- 住民票(自治体によって違う)
- 雇用保険被保険者証 など
申請代行では、これらの要件確認と証明書類の収集を専門家が代行いたします。
建設業許可申請の流れと手続き方法
建設業許可の申請手続きは複雑で時間がかかるため、多くの企業が申請サポートを利用しています。
Step1:要件確認・事前診断
- 5つの許可要件の詳細確認
- 必要書類の確認
- 申請戦略の立案
Step2:書類収集・作成
- 登記事項証明書、納税証明書等の取得
- 実務経験証明書の作成
- 財務諸表の作成
Step3:申請書類の作成
- 建設業許可申請書の作成
- 各種証明書類の添付
- 申請手数料の準備
Step4:申請書提出
- 都道府県庁または地方整備局への提出
- 申請手数料(知事許可:90,000円、大臣許可:150,000円)の納付
Step5:審査期間
- 標準処理期間:30日程度
- 補正等がある場合は延長される場合がある
Step6:許可証の交付
- 許可通知書の送付
申請に必要な主な書類
基本書類
- 建設業許可申請書
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額書
- 財務関係書類
役員・技術者関係書類
- 役員等の一覧表
- 営業所技術者一覧表
- 実務経験証明書
- 国家資格者・監理技術者一覧表
申請代行・申請サポートのメリット
時間の短縮
- 複雑な書類作成を専門家が代行
- 補正対応もスムーズ
確実性の向上
- 要件確認の精度向上
- 不許可リスクの低減
継続的なサポート
- 許可取得後の各種変更届
- 更新申請のサポート
申請代行サービスでは、これらすべての手続きを専門家が代行し、確実で迅速な許可取得をサポートいたします。
よくある質問(FAQ)
Q1:屋根工事業の許可で太陽光パネル設置工事は可能ですか?
A1:屋根一体型の太陽光パネル設置工事は屋根工事業の範囲に含まれます。ただし、架台設置型の太陽光パネル工事については、電気工事業の許可が必要になる場合があります。申請サポートでは、工事内容に応じた適切な業種選択をアドバイスいたします。
Q2:個人事業主でも建設業許可は取得できますか?
A2:はい、個人事業主でも建設業許可の取得は可能です。常勤役員等の要件については、事業主本人が要件を満たしていることが必要です。申請代行では、個人事業主向けの申請サポートも承っております。
Q3:実務経験の証明が困難な場合はどうすればよいですか?
A3:実務経験の証明には工事請負契約書等が原則ですが、それらが保存されていない場合でも、工事台帳、注文書、請求書等で証明できる場合があります。申請サポートでは、利用可能な証明書類の確認と、最適な証明方法をご提案いたします。
Q4:他業種の許可を既に持っている場合、追加で屋根工事業の許可を取得できますか?
A4:はい、業種追加として屋根工事業の許可を追加取得することが可能です。既存の許可と同一の営業所技術者で対応できる場合もありますが、要件確認が重要です。申請代行では、最適な業種追加戦略をご提案いたします。
Q5:許可取得までの期間はどのくらいですか?
A5:標準処理期間は30日程度ですが、書類準備期間を含めると、申請サポートを利用した場合でも2~3ヶ月程度を見込んでおくことをお勧めします。申請代行では、スケジュール管理も含めて全面的にサポートいたします。
Q6:許可取得後の義務はありますか?
A6:建設業許可取得後は、毎年の決算変更届の提出、5年ごとの更新申請、各種変更届の提出等の義務があります。申請サポートでは、取得後の継続的な手続きサポートも承っております。
Q7:屋根工事と板金工事の区分が不明確な場合はどうすればよいですか?
A7:工事内容の詳細確認が重要です。屋根材として金属薄板を使用する場合は屋根工事業、外壁や雨樋等に使用する場合は板金工事業になります。申請代行では、具体的な工事内容を確認した上で、適切な業種選択をサポートいたします。
まとめ
屋根工事業における建設業許可は、事業拡大と信頼性向上のために重要な資格です。2020年の建設業法改正により、要件が一部緩和され、取得しやすくなった一方で、手続きの複雑さは変わらず、専門的な知識と経験が必要です。
屋根工事業許可取得のポイント
1. 正確な要件確認
- 常勤役員等の経験要件の詳細確認
- 営業所技術者の資格・経験要件の確認
- 財産要件の確認
2. 適切な書類準備
- 実務経験証明書の作成
- 財務関係書類の整備
- 各種証明書の取得
3. 業種区分の適切な判断
- 屋根工事と他業種(板金工事等)の区分
- 将来の事業展開を考慮した業種選択
4. 継続的な管理体制
- 許可取得後の各種手続き対応
- 更新申請の準備
申請代行・申請サポートの重要性
建設業許可申請は、要件確認から書類作成、提出まで多岐にわたる専門知識が必要です。申請代行や申請サポートを利用することで、以下のメリットが得られます:
- 確実性の向上:専門家による要件確認により、不許可リスクを最小限に抑制
- 時間の短縮:複雑な手続きを効率的に進行
- 継続的なサポート:取得後の管理業務も継続的にフォロー
特に屋根工事業においては、技術の進歩や新たな工法の導入により、業種区分の判断が難しくなっているケースが増えています。専門家による申請サポートを受けることで、現在の事業内容に最適な許可取得が可能になります。
今後の展望
屋根工事業界は、脱炭素社会の実現、建物の長寿命化、自然災害への対応強化など、社会的要請に応える重要な役割を担っています。建設業許可を取得し、適切な技術力と経営基盤を備えることで、これらの社会課題解決に貢献できる事業者として成長することができます。
建設業許可の申請を検討されている屋根工事業者の皆様には、ぜひ申請代行サービスの活用をご検討いただき、確実で効率的な許可取得を実現していただきたいと思います。申請サポートを通じて、皆様の事業発展に貢献できることを心より願っております。

行政書士:岩田雅紀
『環境系専門の専門行政書士』行政書士岩田雅紀事務所代表
産廃業許可、建設業許可申請を主な業務として取り扱っている。
資格:行政書士 天井クレーン 車両系建設機械 etc
本記事は、建設業法及び関連法令に基づいて作成しておりますが、個別具体的な事案については、専門家にご相談ください。申請代行・申請サポートに関するお問い合わせは、建設業許可専門の行政書士事務所までお気軽にご相談ください。