廃油の定義から処理方法まで徹底解説-事業者必見のガイド

産業廃棄物として分類される「廃油」について正しく理解していますか?多くの事業者が「廃油とは何か」「どのように処理すべきか」という基本的な疑問を抱えています。不適切な廃油の管理は環境汚染リスクだけでなく、法的罰則の対象にもなり得ます。
本記事では、産業廃棄物としての廃油の定義から区分、種類、適正な処理方法まで、法令に基づいて体系的に解説します。廃油管理の責任者として必要な知識を身につけ、コンプライアンスを守りながら環境負荷を低減するための具体的な方法を詳しくご紹介します。

行政書士:岩田雅紀
『環境系専門の専門行政書士』行政書士岩田雅紀事務所代表
産廃業許可、建設業許可申請を主な業務として取り扱っている。
資格:行政書士 天井クレーン 車両系建設機械 etc
目次
- 産業廃棄物としての廃油の定義
- 廃油の区分と法的位置づけ
- 廃油の種類と具体例
- 特別管理産業廃棄物としての廃油
- 廃油の処理方法
- 廃油のリサイクル方法
- 廃油処理の費用相場
- 廃油に関するよくある質問
- 廃油処理の法的義務と罰則
- まとめ:適正な廃油管理のポイント
産業廃棄物としての廃油の定義
廃油とは何か
産業廃棄物における「廃油」とは、事業活動に伴って排出される使用済みの油のことです。廃棄物処理法では、廃油は20種類ある産業廃棄物の一つとして位置づけられています。
産業廃棄物としての廃油は、業種や排出施設を問わず、すべての事業活動から発生する使用済みの油が対象となります。つまり、工場から排出される機械油だけでなく、飲食店から排出される使用済みの食用油も産業廃棄物としての廃油に該当します。
法律上の廃油の範囲
廃棄物処理法の施行通知によると、廃油には以下のものが含まれるとされています。
- 鉱物性油(石油由来の油)
- 動植物性油脂(食用油など)
- 潤滑油(エンジンオイルなど)
- 絶縁油(トランス用オイルなど)
- 洗浄油(部品洗浄に使用される油)
- 切削油(金属加工時の熱対策や潤滑に使用される油)
- 溶剤(有機溶剤を含む)
- タールピッチ(常温で固形状のもの)等
注目すべきは、一般的に「油」というと水と混ざらない物質を想像しますが、廃棄物処理法における廃油の定義では、アルコールなどの水に溶ける溶剤も「廃油」として扱われる点です。
廃油の区分と法的位置づけ
廃棄物としての区分
廃棄物処理法では、廃棄物を以下のように区分しています。
- 一般廃棄物:家庭から排出される廃棄物や、産業廃棄物以外の事業活動から排出される廃棄物
- 産業廃棄物:事業活動に伴って排出される廃棄物のうち、法令で定められた20種類
- うち一つが「廃油」
- 特別管理産業廃棄物:産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性などの危険性を持つもの
廃油は基本的に産業廃棄物として分類されますが、その性状によっては「特別管理産業廃棄物」に分類されるケースもあります。
産業廃棄物としての位置づけ
産業廃棄物の種類は廃棄物処理法で20種類と定められており、廃油はそのうちの一つです。産業廃棄物の廃油は、事業活動に伴って生じた廃棄物であれば、業種や排出施設を問わずすべての事業者から排出される廃油が該当します。これは、紙くず・木くず・繊維くず・動植物性残さなど、排出する業種が限定されている産業廃棄物とは異なり、あらゆる業種の事業者が排出する廃油が産業廃棄物となる点が特徴です。
廃油の種類と具体例
廃油は大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類できます。
鉱物性油
石油を原料とする油で、主に工業用途で使用されます。
- エンジンオイル
- モーターオイル
- ギアオイル
- 潤滑油
- 重油
- トランス油(変圧器油)
- 機械油
動植物性油
動物や植物から抽出された油で、主に食用として使用されます。
- 食用油(サラダ油、てんぷら油など)
- ラード(豚脂)
- 魚油
- オリーブオイル
- パーム油
- 菜種油
廃溶剤
石油や油脂工業の生産工程や、塗装、洗浄、印刷などの作業で使用される溶剤です。
- 洗浄用溶剤(部品洗浄などに使用)
- アルコール類
- ガソリン
- アセトン
- イソプロピルアルコール(IPA)
- トリクロロエチレン
- テトラクロロエチレン
- ジクロロメタン
これらの廃油は、その性状や含有成分によって通常の産業廃棄物として処理するか、特別管理産業廃棄物として処理するかが異なります。
特別管理産業廃棄物としての廃油
廃油は大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類できます。
鉱物性油
石油を原料とする油で、主に工業用途で使用されます。
- エンジンオイル
- モーターオイル
- ギアオイル
- 潤滑油
- 重油
- トランス油(変圧器油)
- 機械油
動植物性油
動物や植物から抽出された油で、主に食用として使用されます。
- 食用油(サラダ油、てんぷら油など)
- ラード(豚脂)
- 魚油
- オリーブオイル
- パーム油
- 菜種油
廃溶剤
石油や油脂工業の生産工程や、塗装、洗浄、印刷などの作業で使用される溶剤です。
- 洗浄用溶剤(部品洗浄などに使用)
- アルコール類
- ガソリン
- アセトン
- イソプロピルアルコール(IPA)
- トリクロロエチレン
- テトラクロロエチレン
- ジクロロメタン
これらの廃油は、その性状や含有成分によって通常の産業廃棄物として処理するか、特別管理産業廃棄物として処理するかが異なります。
特別管理産業廃棄物としての廃油
特別管理産業廃棄物とは
特別管理産業廃棄物とは、産業廃棄物のうち爆発性、毒性、感染性その他人の健康または生活環境に被害を生じるおそれがある性状を有するもので、通常の産業廃棄物よりも厳格な管理が求められます。
引火性廃油
廃油の中でも、以下の条件に該当するものは「引火性廃油」として特別管理産業廃棄物に分類されます。
- 引火点が70℃未満の燃えやすい油
- 揮発油類(ガソリンなど)
- 灯油類
- 軽油類
引火点とは、油が引火する最低温度を指し、この温度が低いほど引火しやすい危険な油であることを意味します。特別管理産業廃棄物に分類される引火性廃油は、通常の廃油と比べてより厳格な管理と処理が求められます。
特定有害廃油
以下の有害物質を含む廃油も特別管理産業廃棄物に分類されます。
- PCB(ポリ塩化ビフェニル)を含む廃油
- 特定の有機塩素化合物を含む廃油
- トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロメタンなどの特定の廃溶剤
- 1,4-ジオキサンを含む廃油
これらの特定有害廃油は「特定有害産業廃棄物」としてさらに厳しい管理基準の対象となります。
廃油の処理方法
廃油の処理方法は大きく分けて「再生利用」「減量化」「最終処分」の3つに分類されます。環境省の統計によると、廃油の処理割合は再生利用が約40%、減量化が約58%、最終処分が約2%となっています。
処理の流れ
- 収集・運搬: 許可を持つ産業廃棄物収集運搬業者が排出事業者から廃油を収集
- 中間処理: 焼却、油水分離、中和などの処理により減量化・無害化
- リサイクル: 再生利用可能な廃油は燃料や原料として再利用
- 最終処分: 処理後の残渣を埋立処分
適正処理のポイント
- 廃油は必ず許可を持つ産業廃棄物処理業者に委託すること
- 特別管理産業廃棄物に該当する廃油は、特別管理産業廃棄物処理業の許可を持つ業者に委託すること
- マニフェスト(産業廃棄物管理票)を適切に管理すること
- 廃油の保管には、漏洩防止対策を十分に行うこと
処理方法は廃油の種類や性状によって異なるため、処理業者と十分な情報共有を行うことが重要です。
廃油のリサイクル方法
廃油は適切に処理すれば貴重な資源としてリサイクルが可能です。主なリサイクル方法をご紹介します。
燃料油化(再生重油)
廃油から不純物を除去して再生油として燃料に再利用する方法です。
- 廃油から水分を分離
- 遠心分離機で不純物を除去
- 再生重油として製品化
再生された重油は、工場のボイラーや暖房用燃料、公衆浴場などの燃料として利用されます。
バイオディーゼル燃料化
廃食用油から製造されるバイオディーゼル燃料は、環境に優しい燃料として注目されています。
- 廃食用油から不純物を除去
- メタノールと触媒を添加
- グリセリンを分離
- バイオディーゼル燃料として精製
バイオディーゼル燃料は、ディーゼル車の燃料や農業機械の燃料として利用されます。
有機溶剤の蒸留再生
使用済みの有機溶剤は蒸留処理により再生することが可能です。
- 廃溶剤を蒸留装置に投入
- 加熱して溶剤を気化させ、不純物と分離
- 気化した溶剤を冷却して液体に戻す
- 再生溶剤として製品化
再生された溶剤は、原料として再び使用することができます。
サーマルリサイクル
廃油を燃焼させる際に発生する熱エネルギーを回収し、有効利用する方法です。
- 廃油を専用の焼却施設で燃焼
- 発生した熱エネルギーを回収
- 発電や暖房、温水供給などに利用
サーマルリサイクルは、材料としてリサイクルが難しい廃油の有効活用法として重要です。
廃油処理の相場費用
廃油の処理費用は、種類や量、委託する業者、処分方法などによって大きく変動します。ここでは一般的な費用相場をご紹介します。
一般的な廃油の処理費用
- 一般的な廃油:5〜100円/kg
- 200Lドラム缶1本あたり:約5,000〜20,000円
- 4tトラック1台分:約50,000〜200,000円
特別管理産業廃棄物の処理費用
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引火性廃油:20円〜/kg
- 特定有害産業廃棄物:50円〜/kg
- PCB含有廃油:要見積もり(高額になる傾向あり)
費用に影響する要因
-
廃油の種類と性状: 特別管理産業廃棄物に該当するか否か
- 処理方法: リサイクルするか最終処分するか
- 廃油の量: 大量であれば単価は下がる傾向
- 含有物質: 有害物質の含有により処理費用が高額になる
- 地域: 地域によって処理費用は異なる
- 収集運搬距離: 処理施設までの距離
正確な処理費用を知るためには、複数の処理業者から見積もりを取得することをおすすめします。また、廃油の性状や含有物質を正確に把握して処理業者に伝えることが重要です。
廃油に関するよくある質問
Q1: 飲食店の廃食用油は産業廃棄物ですか?
A1: はい、事業活動に伴って生じた使用済みの油はすべて産業廃棄物として扱われるため、飲食店で使用した廃食用油も産業廃棄物の「廃油」に該当します。飲食店から出る廃食用油は、産業廃棄物処理業者に委託して処分する必要があります。特に油の使用頻度が高い飲食店では、廃油処理業者に定期的な回収を依頼するケースが一般的です。
Q2: 重油は産業廃棄物?特別管理産業廃棄物?
A2: 事業活動で排出された使用済みの重油は産業廃棄物に分類されます。一般的に重油の引火点は70℃以上であるため、通常は特別管理産業廃棄物には該当しません。ただし、重油は霧状にした場合、常温でも引火の危険性があります。しかし、一般的な廃棄の状況で霧状になることは考えにくいため、引火の危険性は高くないと考えられています。
Q3: 廃油は有価物として売却できますか?
A3: 廃油の中には、リサイクル率が高く有価物として取引できるものもあります。しかし、有価物として取引する場合でも、廃油の買取金額より運搬費が上回る「逆有償取引」の場合は注意が必要です。逆有償取引の場合、運搬中の廃油は廃棄物として見なされるため、廃棄物処理法による規制の対象となります。廃油の買取金額や運搬費用を定期的に確認し、逆有償取引に該当しないかを把握することが重要です。
Q4: 廃油と廃溶剤の違いは何ですか?
A4: 廃棄物処理法上、廃溶剤も廃油の一種として扱われます。一般的に「油」は水と混ざらない物質を指しますが、廃棄物処理法では水に溶けるアルコール類などの溶剤も「廃油」として分類されます。特に有機溶剤(トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなど)を含む廃油は、特別管理産業廃棄物に該当する可能性があるため、適切な管理が必要です。
Q5: 混合物としての廃油はどのように扱われますか?
A5: 「硫酸ピッチ」のように廃油と他の産業廃棄物が混合したものは、「廃油と廃酸の混合物」といった形で取り扱われます。また、「タンクスラッジ」は「廃油と汚泥の混合物」として取り扱われます。混合物の場合、含有率によって分類が変わることがありますが、現在は明確な基準が示されていません。以前は「油分を5%以上含むでい状物は汚泥と廃油の混合物として取扱う」という通知がありましたが、現在は環境省からの明確な指針は出されていません。
廃油処理と法的義務と罰則
廃油の不適切な処理は環境汚染を引き起こすだけでなく、法的罰則の対象となります。事業者が知っておくべき法的義務と罰則について解説します。
排出事業者の責任
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排出事業者責任: 廃棄物処理法では「排出事業者責任」の原則があり、廃油を排出する事業者は、その廃油が最終処分されるまで責任を負います。
- 委託基準の遵守: 廃油の処理を委託する場合は、許可を持つ産業廃棄物処理業者に委託する必要があります。
- マニフェスト管理: 廃油の処理を委託する際は、マニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付し、適切に管理する義務があります。
- 保管基準の遵守: 廃油を保管する場合は、漏洩防止対策、保管場所の表示などの保管基準を遵守する必要があります。
廃油処理違反の罰則
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無許可業者への委託: 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方
- マニフェスト不交付: 1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金
- 不法投棄: 5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方(法人の場合は3億円以下の罰金)
- 保管基準違反: 6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金
特別管理産業廃棄物に関する追加義務
特別管理産業廃棄物に該当する廃油を排出する事業者には、以下の追加義務があります。
- 特別管理産業廃棄物管理責任者の設置: 特別管理産業廃棄物を排出する事業場ごとに、専門知識を持つ管理責任者を設置する必要があります。
- 特別管理産業廃棄物処理業者への委託: 特別管理産業廃棄物の処理は、特別管理産業廃棄物処理業の許可を持つ業者に委託する必要があります。
- 帳簿の作成・保存: 特別管理産業廃棄物の排出、保管、処理などについて帳簿を作成し、5年間保存する義務があります。
廃油の適正処理は環境保全だけでなく、法令遵守の観点からも非常に重要です。違反した場合の罰則も厳しいため、事業者は廃油の処理について正確な知識を持ち、適切に対応する必要があります。
まとめ
本記事では、産業廃棄物としての廃油について、その定義から区分、種類、処理方法まで詳しく解説しました。最後に、事業者が廃油を適正に管理するためのポイントをまとめます。
廃油管理の重要ポイント
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廃油の正確な区分把握:
- 通常の産業廃棄物か特別管理産業廃棄物かを正確に把握する
- 引火点70℃未満の廃油は特別管理産業廃棄物として扱う
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適切な保管の実施:
- 漏洩防止対策を講じる(防油堤、密閉容器の使用など)
- 保管場所に廃油の種類・管理者名などを表示する
- 混合による危険性を理解し、異なる種類の廃油を分別保管する
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信頼できる処理業者の選定:
- 許可証の確認(産業廃棄物処理業、特別管理産業廃棄物処理業)
- 処理施設の実地確認
- 処理料金の適正価格の把握
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リサイクル優先の処理:
- 可能な限りリサイクルが可能な処理方法を選択する
- 廃食用油のバイオディーゼル化、廃溶剤の蒸留再生など
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法的義務の遵守:
- マニフェスト(産業廃棄物管理票)の適切な運用
- 特別管理産業廃棄物管理責任者の設置(該当する場合)
- 帳簿の作成・保存
最終メッセージ
廃油は適切に管理・処理すれば貴重な資源となる一方、不適切な処理は環境汚染や法的罰則のリスクを伴います。事業活動から排出される廃油は、その性状を正しく把握し、適切な方法で処理することが事業者としての社会的責任です。
本記事が、皆様の廃油管理の一助となり、環境に配慮した事業活動の実現に貢献できれば幸いです。廃油処理に関してご不明な点がございましたら、所轄の行政機関や産業廃棄物処理の専門家にご相談ください。
この記事は2025年5月時点の情報に基づいて作成されています。法令や制度は改正される可能性があるため、最新の情報については関係機関にご確認ください。