はじめに

東京都で建設業や製造業を営む事業者の皆様、産業廃棄物の処理にお困りではありませんか?産業廃棄物収集運搬業許可は、事業成長に欠かせない重要な許可です。本記事では、東京都の産業廃棄物収集運搬業許可について、行政書士の視点から最新の情報を含めて詳しく解説します。
目次
- 産業廃棄物収集運搬業許可とは
- 産業廃棄物収集運搬制度の歴史
- 東京都の許可制度の特徴
- 許可取得の要件と手続き
- 申請手続きの流れ
- 費用と期間
- 東京都の申請における注意点
- よくある質問(Q&A)
- まとめ

行政書士:岩田雅紀
『環境系専門の専門行政書士』行政書士岩田雅紀事務所代表
産廃業許可、建設業許可申請を主な業務として取り扱っている。
資格:行政書士 天井クレーン 車両系建設機械 etc
産業廃棄物収集運搬業許可とは
産業廃棄物収集運搬業許可とは、他人から委託を受けて産業廃棄物の収集・運搬を事業として行う際に必要な許可です。東京都で産業廃棄物の収集運搬業を営むには、東京都知事の許可を受けなければなりません。
この許可は、適正な産業廃棄物処理を確保し、環境保全と公衆衛生の向上を図ることを目的としています。許可を受けずに産業廃棄物の収集運搬業を営んだ場合、廃棄物処理法違反として重い刑事罰が科せられる可能性があります。
産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、法律で定められた20種類の廃棄物を指します。具体的には、建設工事から発生するコンクリートがらや木くず、製造業から排出される金属くずや廃プラスチック類などが該当します。
産業廃棄物収集運搬制度の歴史
産業廃棄物収集運搬業許可制度の歴史を振り返ることで、現在の制度の意義がより深く理解できます。
制度創設の背景(1970年代)
日本の産業廃棄物処理制度は、高度経済成長期の1970年に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)が制定されたことから始まります。当時、大量生産・大量消費社会の到来により、産業廃棄物の排出量が急激に増加し、不法投棄や不適正処理による環境汚染が深刻な社会問題となっていました。
許可制度の開始(1977年)
1977年(昭和52年)に廃棄物処理法が改正され、産業廃棄物処理業の許可制度が本格的に開始されました。この改正により、産業廃棄物の収集運搬業者は都道府県知事の許可を受けることが義務付けられ、委託基準も明確化されました。
マニフェスト制度の導入
制度の発展において重要な節目となったのが、マニフェスト制度の導入です。
- 1990年:厚生省(現環境省)の行政指導により任意運用開始
- 1993年:マニフェスト制度の義務化
- 1998年:電子マニフェストの制度化
現代の制度への発展
その後も度重なる法改正により制度は充実し、2023年現在では、より厳格で実効性の高い制度として運用されています。特に東京都では、首都圏の産業廃棄物処理の中心的役割を担うため、他の自治体よりも厳しい審査基準が設けられています。
東京都の許可制度の特徴
東京都の産業廃棄物収集運搬業許可制度には、他の都道府県とは異なる特徴があります。
完全予約制での申請受付
東京都では申請受付を完全予約制としており、事前に電話での予約が必要です。申請日は予約から1~2か月先になることが多く、早めの予約が重要です。
申請受付場所
東京都環境局 資源循環推進部 産業廃棄物対策課
- 所在地:新宿区西新宿2-8-1 都庁第二本庁舎19階北側
- 電話:03-5388-3587
東京都多摩環境事務所 廃棄物対策課
- 所在地:立川市錦町4-6-3 東京都立川合同庁舎3階
- 電話:042-528-2693
厳格な現金納付制度
東京都では、申請手数料を現金で当日納付する必要があります。電子納付やクレジットカード決済には対応していません。これは、行政手続きの透明性と確実性を担保するための措置です。
申請手数料は以下のとおりです:
新規許可申請**:81,000円
更新許可申請(積替え保管除く):42,000円(東京は安い)
更新許可申請(積替え保管含む):73,000円
先行許可制度によるメリット
東京都では「先行許可制度」を導入しており、一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)で同一品目の収集運搬業許可を取得する場合、最初に取得した許可の書類を活用して、他の自治体での許可取得手続きを簡素化できます。
許可取得の要件と手続き
産業廃棄物収集運搬業許可を取得するためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。
1. 講習会の受講
公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが実施する講習会を受講し、修了証を取得することが必要です。
新規申請:修了証の有効期間は5年
更新申請:修了証の有効期間は2年
2. 経理的基礎
事業を継続的に行うために必要な経理的基礎を有していることが求められます。法人の場合は直近3年分の決算書類、個人の場合は所得税の納税証明書等による確認が行われます。
3. 事業計画の適正性
収集運搬する産業廃棄物の種類、収集運搬方法、運搬ルート等について、適法かつ適切な事業計画を策定する必要があります。
4. 収集運搬施設
産業廃棄物を適正に収集運搬するために必要な車両、容器等を有していることが必要です。東京都では、ディーゼル車走行規制の適合車両であることも要求されます。
5. 欠格事由の非該当
法律で定められた欠格事由(暴力団関係者、破産者等)に該当しないことが必要です。
申請手続きの流れ
東京都における産業廃棄物収集運搬業許可の申請手続きは以下の流れで進行します。
1. 事前準備
講習会の受講と必要書類の収集を行います。特に法人の場合、決算書類や登記事項証明書など、多数の公的書類が必要となります。
2. 申請予約
申請受付場所に電話で予約を取ります。予約時には以下の情報を準備しておきます:
- 申請者名(法人名または個人名)
- 申請種別(新規・更新・変更)
- 更新の場合は既存の許可番号
- 希望する申請日時
3.申請書の作成
東京都の指定様式を使用して申請書類を作成します。他の自治体の様式は使用できませんので注意が必要です。
4. 申請(窓口持参のみ)
重要なポイント:東京都では郵送での申請は受け付けていません。**必ず申請者または委任を受けた代理人が窓口に持参する必要があります。申請当日は:
- 申請書類一式(正副2部)
- 申請手数料(現金)
- 許可証送付用レターパックプラス
を持参します。
5. 審査
標準処理期間は申請書受理後60日(優良認定申請を併せて行う場合は80日)です。審査期間中の進捗確認は受け付けていません。
6. 許可証の交付
許可証は原則として郵送で交付されます。事前に提出したレターパックプラスを使用して送付されます。
申請書類の作成
東京都の指定様式を使用して申請書類を作成します。他の自治体の様式は使用できませんので注意が必要です。
4. 申請(窓口持参のみ)
**重要なポイント:東京都では郵送での申請は受け付けていません。**必ず申請者または委任を受けた代理人が窓口に持参する必要があります。申請当日は:
- 申請書類一式(正副2部)
- 申請手数料(現金)
- 許可証送付用レターパックプラス
を持参します。
### 5. 審査
標準処理期間は申請書受理後60日(優良認定申請を併せて行う場合は80日)です。審査期間中の進捗確認は受け付けていません。
### 6. 許可証の交付
許可証は原則として郵送で交付されます。事前に提出したレターパックプラスを使用して送付されます。
費用と期間
申請費用
行政手数料:81,000円(新規)/ 42,000円~73,000円(更新)
講習会受受講:約30,000円~40,000円
書類取得費用:約20,000円~30,000円
行政書士報酬:80,000円~150,000円(依頼する場合)
処理期間
標準処理期間:60日(申請書受理後)
実際の期間:予約から許可証受領まで約3~4か月
東京都の申請における注意点
郵送申請・電子申請は不可
東京都では、産業廃棄物収集運搬業許可の申請について、郵送申請や電子申請には対応していません。必ず窓口への持参が必要です。また電子納付にも対応しておらず、申請手数料は現金での当日納付が必要です。
これは、申請書類の確実な受理と申請者の本人確認を徹底するための措置です。他の自治体では郵送申請が可能な場合もありますが、東京都独自の厳格な運用となっています。
ディーゼル車規制への対応
東京都では「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」に基づくディーゼル車走行規制があり、不適合車両は登録できません。平成15年10月以前に初度登録されたディーゼル車を使用する場合は、DPF装着証明書が必要になる場合があります。
八王子市での特例
八王子市内に積替え保管施設を設置する場合は、東京都ではなく八王子市長の許可が必要です。ただし、東京都の収集運搬業許可があれば、八王子市内での収集運搬業(積替え保管を除く)は可能です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 東京都の産業廃棄物収集運搬業許可の申請は郵送でできますか?
A1. いいえ、東京都では郵送での申請は受け付けていません。必ず申請者または委任を受けた代理人が窓口に持参する必要があります。これは東京都独自の厳格な運用で、申請書類の確実な受理と本人確認を徹底するための措置です。
Q2. 申請手数料の電子納付は可能ですか?
A2. いいえ、東京都では電子納付には対応していません。申請手数料は申請当日に都庁本庁舎内の金融機関または多摩環境事務所管理課経理担当窓口で現金納付する必要があります。クレジットカードや振込での支払いはできません。
Q3. 許可取得までにどの程度の期間がかかりますか?
A3. 申請予約から許可証受領まで約3~4か月かかります。内訳は以下のとおりです:
- 申請予約待ち:1~2か月
- 審査期間:60日(申請書受理後)
- 許可証交付:約1週間
Q4. 他の都道府県の許可も同時に取得したいのですが、何か優遇制度はありますか?
A4. はい、東京都では「先行許可制度」があります。一都三県(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)で同一品目の許可を取得する場合、最初に取得した許可の添付書類を他の自治体でも利用でき、書類の省略が可能です。
Q5. 更新申請はいつから可能ですか?
A5. 更新申請は、現在の許可の有効期限の4か月前から可能です。許可の有効期間は5年間ですので、計画的に更新手続きを進めることが重要です。
Q6. 申請書類に不備があった場合はどうなりますか?
A6. 申請書類に不備がある場合、補正を求められます。補正期間は標準処理期間(60日)に含まれないため、結果的に許可取得が遅れることになります。事前に十分な確認を行うか、専門家に相談することをお勧めします。
Q7. 産業廃棄物収集運搬業許可を取得すれば、どのような廃棄物でも運搬できますか?
A7. いいえ、許可証に記載された廃棄物の種類のみ運搬可能です。20種類の産業廃棄物から、実際に取り扱う予定の廃棄物を選択して申請します。後から種類を追加する場合は変更許可申請が必要です。
Q8. 個人事業主でも許可取得は可能ですか?
A8. はい、個人事業主でも許可取得は可能です。ただし、法人の場合と必要書類が一部異なります。個人の場合は住民票や所得税の納税証明書などが必要になります。
Q9. 許可証を紛失した場合はどうすればよいですか?
A9. 許可証を紛失した場合は、再交付申請を行う必要があります。再交付手数料として3,400円が必要です。紛失届の提出と併せて手続きを行います。
Q10. 行政書士に依頼するメリットは何ですか?
A10. 行政書士に依頼する主なメリットは以下のとおりです:
- 複雑な申請書類の正確な作成
- 法改正等の最新情報への対応
- 申請予約から許可取得までの一貫したサポート
- 書類不備による審査遅延の防止
- 他都道府県の同時申請への対応
特に東京都では申請手続きが厳格で、書類の不備があると大幅な遅延を招く可能性があるため、専門家への依頼を検討されることをお勧めします。
まとめ
東京都の産業廃棄物収集運搬業許可は、首都圏で産業廃棄物処理業を営む上で極めて重要な許可です。制度の歴史を理解し、現在の厳格な審査基準と手続きの特徴を把握することが、スムーズな許可取得への第一歩となります。
東京都の申請における重要なポイント
- 郵送申請・電子申請は不可 - 必ず窓口持参
- 電子納付不可 - 現金による当日納付が必要
- 完全予約制 - 1~2か月前の事前予約が必要
- 先行許可制度 - 一都三県での同時申請に有利
産業廃棄物収集運搬業許可の取得は、適正な産業廃棄物処理を通じて環境保全に貢献するとともに、事業の拡大と信頼性向上につながる重要な投資です。東京都では他の自治体以上に厳格な審査が行われますが、適切な準備と手続きにより確実に許可を取得することができます。
許可取得をお考えの事業者様は、十分な準備期間を確保し、必要に応じて産業廃棄物分野を専門とする行政書士にご相談いただくことをお勧めいたします。適正な産業廃棄物処理体制の構築により、持続可能な事業発展を実現していただければと思います。