
茨城県で事業を営む企業にとって、産業廃棄物の適正処理は環境保全と法的コンプライアンスの重要な課題です。建設業、製造業、サービス業を問わず、事業活動に伴って発生する産業廃棄物を適切に処理するために、茨城県の産業廃棄物収集運搬業許可について詳しく解説いたします。

行政書士:岩田雅紀
『環境系専門の専門行政書士』行政書士岩田雅紀事務所代表
産廃業許可、建設業許可申請を主な業務として取り扱っている。
資格:行政書士 天井クレーン 車両系建設機械 etc
目次
- 産業廃棄物収集運搬業の歴史と法的背景
- 茨城県の産業廃棄物処理の現状と統計データ
- 茨城県における許可申請の最新手続き
- 電子納付システムと郵送申請のメリット
- 許可取得に向けた準備と必要書類
- よくある質問(Q&A)
- 行政書士に依頼するメリット
産業廃棄物収集運搬業の歴史と法的背景
戦後復興期から高度経済成長期にかけて、日本では急速な工業化が進み、産業廃棄物の発生量が飛躍的に増加しました。当初は1954年制定の「清掃法」で対応していましたが、産業廃棄物の複雑化・有害化により、より厳格な規制が必要となったのです。
1970年の公害国会において、深刻な環境汚染問題を受けて清掃法を全面改正し、現在の廃棄物処理法が成立しました。この法律により、産業廃棄物の収集運搬業を営むには都道府県知事の許可が必要となり、現在の許可制度の基盤が確立されました。
制度改正の変遷
その後、不法投棄や不適正処理の問題を受けて、法改正が重ねられてきました:
- 1991年改正:排出事業者責任の明確化、マニフェスト制度の導入
- 1997年改正:処理業者の欠格要件強化、許可の更新制導入
- 2010年改正:排出事業者責任の強化、優良業者認定制度の創設
- 2017年改正:電子マニフェストの使用義務化(特定業種)
これらの改正により、現在の厳格で体系的な許可制度が構築されています。
茨城県の産業廃棄物処理の現状と統計データ
最新統計データ(令和5年度実績)
茨城県産業廃棄物実態調査報告書によると、茨城県の産業廃棄物処理の現状は以下の通りです:
排出量・処理量の実績
産業廃棄物発生量:14,492千トン
有償物量:2,951千トン
排出量:11,540千トン
再生利用量:5,579千トン(48.3%)
最終処分量:718千トン(6.2%)
業種別排出量(上位4業種)
1. 製造業:4,175千トン(36.2%)
2. 電気・水道業:2,947千トン(25.5%)
3. 農業:2,583千トン(22.4%)
4. 建設業:1,782千トン(15.4%)
廃棄物種類別排出量(上位5種類)
1. 汚泥:5,316千トン(46.1%)
2. 動物のふん尿:2,579千トン(22.3%)
3. がれき類:1,153千トン(10.0%)
4. ばいじん:902千トン(7.8%)
5. ガラス・コンクリート・陶磁器くず:318千トン(2.8%)
県内処理業界の特徴
茨城県は農業・製造業・建設業が盛んな地域特性を反映し、動物のふん尿や建設系廃棄物の排出量が多いことが特徴です。また、再生利用量の主な用途は肥料・土壌改良材(46.2%)と土木・建築資材(31.2%)となっており、循環型社会形成に向けた取り組みが進んでいます。
茨城県における許可申請の最新手続き
申請方法の選択肢
茨城県では、産業廃棄物収集運搬業許可申請について以下の方法が利用できます:
1. 郵送申請(事前予約制)
2. 窓口申請(対面審査)
令和6年度からは、郵送申請についても事前予約制が導入され、効率的な審査体制が構築されています。
申請手数料の支払い方法
茨城県の先進的な取り組みとして、郵送申請に限り電子納付が利用可能です。
電子納付の方法
1. Payeasy(ペイジー):インターネットバンキングやATMを利用
2. クレジットカード決済:VISA、MasterCard、JCB、American Express、Diners Club対応
電子納付の手順
1. 申請書送付時に電子納付希望の旨、メールアドレス、担当者情報を明記
2. 県から電子納付手続きのメール送信
3. 申請者が電子納付申請手続きを実施
4. 県の承認処理完了
5. 申請者がペイジーまたはクレジットカードで納付
この電子納付システムにより、銀行窓口での証紙購入が不要となり、申請者の利便性が大幅に向上しています。
電子納付システムと郵送申請のメリット
電子納付の優位性
茨城県の電子納付システムは、他県と比較して以下の優位性があります:
利便性の向上
- 銀行窓口での証紙購入が不要
- 24時間いつでも納付可能
- 複数の決済手段に対応
- 代理人(行政書士)のクレジットカードでも決済可能
処理の効率化
令和6年度から手数料納付完了時点で受付日を押印
副本返送は電子納付完了確認後
処理期間の短縮化
コスト削減効果
交通費・時間コストの削減
証紙購入のための移動時間不要
郵送代のみで手続き完了
郵送申請の安全性
郵送申請では書類の紛失リスクを懸念される方もいますが、茨城県では以下の安全対策が講じられています:
- 書類受領確認の実施
- 電子納付完了までの進捗管理
- 副本返送による手続き完了の明確化
許可取得に向けた準備と必要書類
基本的な許可要件
産業廃棄物収集運搬業許可を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります:
1. 講習会修了:日本産業廃棄物処理振興センター主催の講習会受講
2. 施設・設備:適切な運搬車両・容器等の確保
3. 経理的基礎:継続して事業を行うに足る経理的基礎
4. 欠格要件に該当しない:暴力団関係者でない等
主な必要書類(法人の場合)
- 産業廃棄物収集運搬業許可申請書(第1面~第3面)
- 定款の写し
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
- 本籍記載の住民票(役員・株主等)
- 講習会修了証(有効期限内のもの)
事業計画書類
- 事業計画書
- 運搬車両・容器等の写真・仕様書
- 車検証の写し
- 駐車場使用権原を証する書類
財務関係書類
- 直前3年の各事業年度の財務諸表
- 直前3年の法人税の納税証明書
- 中小企業診断士等の意見書(必要に応じて)
申請手数料
- 新規許可申請:81,000円
- 更新許可申請:73,000円
- 変更許可申請:71,000円
よくある質問(Q&A
Q1. 許可の有効期間はどのくらいですか?
A1. 産業廃棄物収集運搬業許可の有効期間は5年間です。有効期限の満了日までに更新申請を行う必要があります。更新申請は有効期限の3か月前から受付を開始します。
Q2. 他県の許可があれば茨城県内でも営業できますか?
A2. いいえ、できません。産業廃棄物収集運搬業許可は都道府県ごとに取得する必要があります。茨城県内で収集運搬業を営む場合は、必ず茨城県知事の許可が必要です。
Q3. 許可申請から許可証交付までどのくらい時間がかかりますか?
A3. 書類に不備がない場合、約60日程度が標準的な処理期間です。ただし、書類の補正が必要な場合や審査が集中している時期は、さらに時間がかかる場合があります。
Q4. 講習会はいつ開催されますか?
A4. 講習会は公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が開催しています。詳しくはHPをご覧ください。(https://www.jwnet.or.jp/)
Q5. 許可証を紛失した場合はどうすればよいですか?
A5. 許可証を紛失した場合は、再交付申請を行う必要があります。再交付手数料は2,400円です。なお、茨城県では令和5年7月から電子許可証も選択可能となっています。
Q6. 変更届はいつまでに提出すればよいですか?
A6. 変更事項が発生した場合、変更の日から10日以内(法人で履歴事項証明書の添付が必要な場合は30日以内)に変更届の提出が必要です。
Q7. 積替え保管を行う場合の手続きは?
A7. 積替え保管を行う場合は、積替え保管を含む許可を取得する必要があります。施設の設置に関する基準がより厳格になり、周辺住民への説明会等も必要となります。
Q8. 特別管理産業廃棄物も取り扱う場合は?
A8. 特別管理産業廃棄物(PCB、アスベスト等)を収集運搬する場合は、特別管理産業廃棄物収集運搬業許可を別途取得する必要があります。より厳しい基準が適用されます。
Q9. 優良業者認定制度とは何ですか?
A9. 適正処理の実績と能力を有する優良な処理業者を認定する制度です。認定を受けると許可の有効期間が7年に延長されるなどのメリットがあります。
Q10. 許可取得後の義務はありますか?
A10. 許可取得後は以下の義務があります:
- マニフェストの適正な運用
- 帳簿の作成・保存(5年間)
- 茨城県条例に基づく実績報告書の提出(年1回)
- 変更事項の届出
- 許可証の携行・提示
行政書士に依頼するメリット
産業廃棄物収集運搬業許可申請は、法律の専門知識と実務経験が求められる複雑な手続きです。行政書士に依頼することで、以下のメリットがあります:
申請書類作成の精度向上
- 法改正に対応した最新の書式・記載例の活用
- 審査基準を踏まえた適切な事業計画書の作成
- 補正指示を受けるリスクの軽減
手続きの効率化
- 事前相談による要件確認
- 必要書類の漏れ・不備の防止
- 茨城県との調整・交渉
- 電子納付手続きのサポート
継続的なサポート
- 許可取得後の変更届・更新申請の管理
- 法改正情報の提供
- コンプライアンス体制の構築支援
茨城県特有の手続きへの対応
茨城県では他県と異なる独自の手続きや条例があります:
- 茨城県廃棄物の処理の適正化に関する条例に基づく実績報告
- 電子納付システムの活用
- 県独自の審査基準・運用指針
これらの茨城県特有の要件に精通した行政書士のサポートにより、スムーズな許可取得が可能となります。
まとめ
茨城県の産業廃棄物収集運搬業許可制度は、環境保全と適正処理の確保を目的として、長い歴史を経て現在の体系的な制度が構築されています。特に電子納付システムの導入や郵送申請の予約制導入など、申請者の利便性向上に積極的に取り組んでいる点が茨城県の特徴です。
年間11,540千トンもの産業廃棄物が排出される茨城県において、適正な収集運搬業者の存在は環境保全と循環型社会形成の要となっています。許可取得を検討されている事業者の皆様は、制度の趣旨を理解し、適切な手続きを行うことで、茨城県の環境保全に貢献していただければと思います。
複雑な許可申請手続きでお困りの際は、ぜひ産業廃棄物処理業許可を専門とする行政書士にご相談ください。茨城県の豊かな自然環境を次世代に引き継ぐため、適正な廃棄物処理体制の構築をサポートいたします。