金属スクラップやプラスチックを屋外保管するときは

許可が必要になります!

 

特定再生資源屋外保管業を許可制とする埼玉県条例が、

令和7年1月1日から施行されます!

【この記事を監修】
行政書士:岩田雅紀
『スクラップヤード専門行政書士』
行政書士岩田雅紀事務所代表
今年話題となった、『千葉県特定再生資源屋外保管業申請』で複数社関与している。

資格:行政書士 天井クレーン 車両系建設機械 etc

目次

  • 背景
  • 特定再生資源について
  • 規制の概要
  • 保管ヤードの面積や高さについて
  • 手続について
  • 経過措置について(既存業者様必見!)
  • 違反・罰則について
  • まとめ

ご挨拶

初めまして、行政書士の岩田と申します。
私は16歳から業界大手金属スクラップ問屋で、30年現場職として汗水を流していました。折に触れスクラップ業界を卒業して行政書士になりましたが、また不思議とご縁がありスクラップ業界に再び携われることを光栄に思います。
令和6年4月から、全国初となる県全体での特定再生資源屋外保管業申請(金属スクラップ条例規制)が千葉県で施行されるに伴いクライアント様の申請のお手伝いをする中で、様々な情報や申請内容を理解することが出来ました。埼玉県の申請内容も千葉県とほぼ変わらない内容ですので、申請ノウハウは他の行政書士事務所より圧倒的に熟知しております。事業者様と情報を共有しながら『共に前へ』、許可申請のお手伝いをしたいと思います。

背景

近年、市内の市街化調整区域を中心に、金属スクラップなどの再生資源物の屋外保管施設が多く立地するようになり、保管に伴う騒音や振動のみならず、不適切な保管による敷地外への崩落や火災の発生など、市民生活の安全に支障をきたす状況が発生しています。一方、再生資源物は有価物として取引きされており、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」の規制対象となる廃棄物には該当しないため、直接規制する法令等がなく、対応に苦慮する状況が続いていました。そこで、市では、市民生活の安全の確保及び生活環境の保全に寄与することを目的とした「さいたま市再生資源物の屋外保管に関する条例 」及び「さいたま市再生資源物の屋外保管に関する条例施行規則 」を制定し、2024年2月1日から施行しました。

※さいたま市条例の背景より抜粋

特定再生資源について

特定再生資源とは?

金属等(金属、雑品スクラップ、プラスチック)を指します。なお廃棄物処理法で規定さえている廃棄物や有害使用済み機器等は除きます。

金属類

  • H鋼
  • 単管パイプ
  • 足場板
  • アルミ材
  • ステンレス材
  • 銅材 など…

プラスチック類

プラスチック素材を使用して、家庭用品から工業用品まで様々な製品がありますが、主な素材として、

  • ポリエチレン
  • ポリプロピレン
  • ポリ塩化ビニル
  • ポリウレタン
  • ABS素材 など…

雑品スクラップ
雑品くずの分類は、主に金属に付属物が付着している状態のもので、解体や破砕等を行って分別し、再利用できるもの。

  • 自転車
  • モーター
  • 制御盤 など…

こういった品物を屋外の置場(100㎡以上超えるヤード)で保管する際は許可申請を行い、許可業者となる必要があります。私の知る限りでは、スクラップヤードは小さな所でも1000㎡以上、大きなヤードでは6000㎡~以上もあるヤードが立地しているので県内の既存事業者はほぼ漏れずに許可申請の対象となるでしょう。

  • 規制の概要

特定再生資源屋外保管業の規制リーフレットより

埼玉県の特定再生資源屋外保管業の規制リーフレットを見ながら説明するのが一番分かり易いと思います。

①標識の掲示

  1. ヤード場の表に、見やすいように標識を掲げること(たて60cm×よこ60cm以上の大きさ)
  2. インターネットで閲覧できる状態にすること。HPで掲載するのが一番分かり易いかと思います(従業員が5人以下の場合、又はウェブサイトを持っていない場合は不要)

②規則で定める高さを超えないこと

ヤード内の高さは任意に決めることが出来なくなります。つまり相場が下がって来た時の、ヤードの容量を大幅に越えたストックは当然出来なくなりますし、ヤード壁最大高さの50㎝以下に抑えて置かなければなりません。

③囲いの設置

  1. 保管の場所の周囲に囲いを設置
  2. 保管物の荷重が直接囲いにかかるおそれがある場合に、構造耐力上安全であること

スクラップヤード申請で最も重要な要素の1つ、それがヤード周りの囲いです。
ヤードの置き方によっては、安全鋼板などの薄い鉄板を使用される(されている)方も居ると思いますが、多くの既存事業者様はヤードの壁に棚掛けて(もたれ掛けて)置かれていると思います。その際、構造耐力上安全でないと、壁が倒壊する恐れがある為、構造耐力上安全であることが許可申請の必須条件となります。(特に千葉県は厳しく取り扱っていますが、埼玉県も厳しく審査されると予想されます)

④汚水の対策

汚水又は油が流出し、地下に浸透するおそれがある場合には、次の処置が必要

  1. 底面が不浸透性の素材で覆う(コンクリート敷き)
  2. 油水分離装置等の設置

これは汚水又は油が流出し地下に浸透する恐れがある場合ですので、油の付着の恐れがある雑品スクラップを一切取り扱わない、金属くずも一切油の付着が無い&取り扱わない事業者様は適用されません(但し雨水を場内浸透なり場外流出をする際に、より厳しいチェックは入る可能性があります)

⑤火災防止措置

  1. 特定再生資源以外の物と混合しない
  2. 電池、潤滑油等火災の発生又は延焼のおそれがある場合、可能な範囲で適正に回収し、処理
  3. 保管の単位の面積を200㎡以内
  4. 隣接する保管物の保管の単位の感覚は2m以上(仕切りが設けられている場合を除く)

鉄くずが燃える?ピンとこない方も居るかもしれませんが、鉄くずは燃えます。しかも結構な勢いで燃えます。近年スクラップヤードが火災で度々ニュースにもなっておりますが、原因は乾電池やリチウムイオンバッテリー系から出火する火災が多いです。私もスクラップ現場職時代、度々プレス機から出火して消化した経験があります。なので、上記の決まりに加え、防火の手順、消化方法、連絡先等を地自体と連携を取れる体制作りも申請の内容となってくると思います。

⑥ねずみ、害虫対策

私もねずみと聞いて思い出しましたが、例えば4tアームロールに金属くずを持ち込まれる業者さんがいますが、ダンプアップした際、ねずみも一緒に降ろすというか、中から逃げ出すなんて言う光景を散々目にしてきました。小動物の格好の根城になるのがスクラップの置場です。なので当然ですが、害虫対策としてねずみ捕り装置等の設置はしなければなりません。

⑦飛散流出対策

先程も汚水の対策で述べましたが、油を勝手に地面に流すことは深刻な環境汚染に繋がります。それとどうしてもスクラップヤードは、飲料缶のプレス材とか悪臭の原因がつきものです。また近年、大型の台風などの自然災害によって、重たい鉄くずでさえも吹き飛んでしまい、周りの道路に落ちていたりします。私も当時、新断バラ(一枚ものの薄鉄板)が強風で吹きとんで慌てた経験があります。今どきスクラップ屋さんは当たり前のように固縛をして運搬、風で飛ばない様にシート掛け等されていらっしゃると思いますが、新規ヤードでは必須の項目になります。

⑧現場責任者の設置

ヤードの監理をしっかり行う目的で、責任者を選任することが決まりです。なお千葉県の例ですが、責任者が1人の会社さんは、責任者がヤードから離れて営業に行った場合、ヤード商売を行うことが出来ないルールです。埼玉県もその様な制度設計になると思います。

  • 施設長(工場長)
  • 副施設長(副施設長)
  • 現場責任者

これぐらいの管理者が居ても、おかしくない人選が必要となってくるでしょう。

⑨騒音・振動対策

どうしてもスクラップヤードは、大きな重機が動き回って、鉄くずをつかみ上げたり作業をしている間に、大きな音や、振動が発生してしまいます。既存事業者様はこの点を十分配慮して作業をしなくてはなりません。また各市の環境課に低騒音仕様の重機など届出を行うなど、適正な管理が求められます。

⑩台帳の作成及び保存

近年窃盗品の横行により、品目の流通管理を徹底する目的で、取引品目や取引年月日を記載する台帳を作成、5年間の保存のルールが出来ました。

名義貸しの禁止

これは埼玉県の申請で初めて拝見する要件になりますが、これはすぐ理解できます。
反社会的勢力に資金が流れないようにする対策のひとつであり、近年スクラップ業界で盗品が多く流通していることもあり、責任の所在を明らかにしておくことの対策でしょう。特に外国人経営者が多い近年のスクラップ業界ですから、上手く逃げ道を作らないよう対策を練られています。

  • 保管ヤードの面積や高さについて

スクラップヤード内においてスクラップを置く際は、決まった面積内、決まった高さ以内など、細かなルールがあります。無秩序に積み上げたスクラップが、倒壊して人が下敷きになるのを防止し、壁を越えて周辺に崩れてしまうのを防ぐためです。大昔はヤードの壁の2倍以上の山にしていた現場をチラホラ見かけました。その量で、他業者がどれぐらいストックしているのか、見に行って判ったものです。私も昔ながらの現場作業員だったので、極限まで高積みするテクニックは豊富に身に付いておりましたが(笑)現在では不要のものとなりました。

さて、この保管できる高さについてリーフレットの図を見ながら解説したいと思います。

①ピラミッド型

この置き方は、通称:ピラミッド型と呼ばれるもので、周辺に寄りかかる壁が無い状態で平置きをした場合の置き方ルールになります。必ず50%の勾配を付けながら積み上げをおこないます。頂点が3mの高さに対し傾斜50%を守ると6mの長さが必要となります。
例えば縦10m横5mの長方形の置き場を作りたいとする場合
短い辺(5m)の半分(2.5m)が辺の中心、2.5m50%勾配だと更に半分の1.25mが置場の高さになります。分かり易く言うと、短い辺を4で割った数字が、ピラミッド型の高さの上限になります。但し長い辺と短い辺を間違えてしまうと、高さが全然変わってしまいますので注意が必要です。

※施行規則第十一条三に『保管の面積を200㎡以下』と規定されているので、仮に長方形の置場だとすると約14m×14mが最大幅になるかと思います。高さの上限が14m÷4=3.5mが高さの上限

①棚掛け型(寄りかけ型)

これは壁が構造耐力上安全な壁を使用して置ける方法です。
50%勾配のルールは適用されますが、高さ上限まで来たら、奥行きの長さに応じて高さを平行にして置けるルールです。但し、壁の高さの50㎝以下までしか置くことが出来ません。

①三方囲い型

最も沢山置ける形がこの、三方囲いだと思います。
これも囲いが構造耐力上安全でないと出来ないのですが、今までと大きな違いは、50%勾配のルールがないことです。(もちろん50%のルールで置く場合は後者の内容は不要になります)その代わりですが、万が一前方に崩落しても安全を担保するために、置場の先端から一定の空白地帯を設ける事で50%勾配のルールを適用しないで置けます。分かり易く言うと、置場先端から高さの2倍の空白地帯を設ける必要があると言う事ですね。それが図のCから4mでありdから6mのことを指しています。

①箱置き型

囲いに鉄箱、網パレット、カーゴ等で上に積んで行くルールです。
千葉県の場合はこの箱に50%勾配のルールが適用されていたので、はっきり言って使いづらかったのですが、埼玉県は最大の高さが5mと言うルール以外、特に規定は設けられていないので、細かな鉄屑や非鉄金属、細かな雑品類は鉄箱保管がスタンダードになっていきそうです。但し、この箱もしっかりとした素材で、曲がってないものを使わないと5mも高積みした時、いとも簡単に上段が崩れ落ちてくるので、曲がっていないものを使用しましょう。

手続きについて

新規開業をするにあたり許可が必要となりますが、一定の流れに沿って、申請をしてゆきます。

まずはじめに、埼玉県と事前協議おこないます。新規開業を目指す方にとって、この事前協議はとても長く険しい内容になると思います。土地の問題、上下水の問題、油水分離槽の問題、ヤード周辺の囲いの問題、事前協議書などに照らし合わせつつ、様々要件をクリアしながら協議を進めて行きます。おおよそ半年近くは掛かるものと思ってください。※この事前協議を行う前提で、土地の購入や賃貸、施設や設備の設置など、ある程度整えて挑む必要があります。

事前協議がある程度形になると、今度は埼玉県から各市区町村へ意見照会がかけられます。その意見を再び協議して概ね整いましたら、次の大きな山場、住民説明会等に駒を進めます。おそらく事業所周辺数百メートルの周辺住民に予め手紙のポスティング等で周知をして、近くの公民館等をお借りして開催するようになると思います。

それが全て終わりましたら、本申請と進み実査等の審査を経て、許可申請が認められる仕組みとなっております。

 

  • 経過措置について(既存業者様必見!)

すでに埼玉県でスクラップヤードを経営されている、既存事業者様は、経過措置があります!

既存事業者様は、次の規制が適用されませんと書いてありますが、期間内にみなし業者にならないと、適用除外にならないことをご注意下さい。

  1. ②保管の高さ、⑤火災防止措置、⑥ねずみ害虫対策、⑦飛散流出対策、⑧騒音・振動対策
    (令和7年1月1日から6か月)
  2. ③保管の場所の周囲に囲いを設置、④汚水の対策
    (令和7年1月1日から5年間)
  3. 保管物を壁に寄りかける(棚掛ける)場合、構造耐力上安全であること(期間なし)

規制の概要に戻ると、それぞれ番号がふってあると思いますが、既存事業者様は、先ず1月1日から6か月以内に既存事業者の届出を行ってみなし業者にならないと、1番目の適用除外を受けられません。
次に2番目の5年間の適用除外期間があるのですが、これは5年後の更新時には確実にクリアにしておかなければならない大きな問題であります。それは『油・汚水処理&囲い』問題です。

既存事業者様がまず直面する問題『うちは鉄板敷きはしてあるけどコンクリなんて敷いてないよ』『油水分離槽なんて付けてないよ』と多くの声が上がると思います。それはしょうがないですよね。今までは有価物としての扱いしか受けていないから(一部産廃中間処理業者は除く)油のことや汚水のことなんて、全く気にせず営業をされていた方が殆どだと思います。しかし今回埼玉県が規制に踏み切った1つのポイント『不適切な保管』の内容として認められてしまいました。なので、産廃中間処理施設とそこまで変わらない施設要件に置場がレベルアップしてしまったのです。これはもう諦めて受け入れるしかありません。

千葉県の申請をして思ったことですが、この5年内に、二つの選択を迫られると思います。

  1. 油水分離槽や囲い壁をしっかり設置し、ヤードの大幅なスペックアップをする。
  2. 油水分離槽を設けずに、取扱品目を必要最低限(油もの一切無し)に抑える大幅なスペックダウン。

正直今現在、その中間的な考えはありません。設置するor設置しない、大幅な設備投資をして将来に備える、多岐に渡る商売を縮小して取り扱えるものだけで商売をする。この事を十分理解する必要があります。

要するに何が言いたいか、既存事業者様は『適用除外は実質5年まで』と、少し大げさかもしれませんが、肝に銘じて置く必要があります。5年内に不浸透素材でヤードの浸透を防ぐ=コンクリを敷く&油水分離槽を設置する(ヤードの大きさによって計算が変わるので、料理店のオイルトラップとは別物の大型設備になります)or小さくまとまる。
今回凄くラッキーなのが、壁の構造耐力上安全は適用除外がずっと続くので、今現在使用している壁=構造耐力上安全とみなしてもらえることです。これは本来、ヤード新設の設計段階で設計士に計算をしてもらい、構造計算書と言うものを出して貰わないといけないからです。だから既存で壁が立っているということは、計算のしようが無く、千葉県ではそれで壁に寄りかかれないで、仕方なくピラミッド型で申請をした事業者様もいたくらいです。ここで説明すると長くなるので端折りますが、この壁の構造耐力上安全如何は、非常にナイーブな問題として、実際に申請する際はご説明出来るかと思います。

 

違反・罰則について

この条例に違反した業者様(基準不適合、無許可営業)は、・行政指導・報告徴収・立入検査等を経て、行政処分が下されます(改善勧告・許可取り消し処分等)。罰則は最大で1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるので、くれぐれもそんなことが起こらない様に、きちんとルールを守って営業を行いましょう。

まとめ

埼玉県特定再生資源屋外保管の内容をざっとご説明しましたが、如何だったでしょうか?最後にまとめになりますが、もうこれは一点だけお伝えしたいと思います。

この申請は大変難しい申請です。既存事業者のみなし届出も中身はそんなに変わらずの難しい内容となっております。平面図の作成や難しい申請書の内容などは、スクラップヤード申請のプロに是非お任せ下さい。どうぞお気軽にご連絡お待ちしております。

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

042-507-9904

<受付時間>
09:00~18:00
※土曜・日曜・祝日は除く

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。

行政書士岩田雅紀事務所

住所

〒207-0003
東京都東大和市
狭山4丁目1521番地の3

アクセス

西武線武蔵大和駅徒歩10分
駐車場:有り(1台)

受付時間

09:00~18:00

定休日

土曜・日曜・祝日